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概要

造形のABC

5中学生の表現大人になる前の「さなぎの時間」河合隼雄は,大人になる前の時期を蝶になる前の「さなぎの時間」*1)にたとえています。大人になるために与えられた「考える時間」です。蝶になる前のさなぎの中では,幼虫の体は一度ドロドロに溶けて再び蝶の姿に生まれ変わるといいます。さなぎの表面に変化は見られなくても,見えないところでの変化は確実に起こっているのです。小学校高学年そして,中学校の子どもたちは,体だけ変化するのではなく心も確実に変化しています。周りの人々は温かく見守り,「待つ」*2)という営みが必要なのです。中学校は生涯学習の「美術」の入口中学校の美術は,生涯学習における「美術」の入口です。小学校の図画工作の「図画」が中学校の美術へ,「工作」が技術に分かれたといえます。小学校の図画工作では様々な造形体験を行うことを意図して構成されていますが,中学校の美術は,芸術文化に関する知識も含め,将来にわたって美術を愛好する心を育てる教科です。学習指導要領における表現領域の内容の取扱いでは「描く活動」と「つくる活動」を1年生で「いずれも4」ですが,中学2・3年生は「いずれか4」となっています。*3)これは,1年生で基礎的なことを厳選して共通に学び,2・3年生の2年間でバランスよく経験することを求めています。高等学校になると,教科を選択することが多く,人によっては中学校が「共通に美術を学ぶ」最後となる可能性があるからです。ですから,美術の先生は,自らの専門性を磨きながらも,生徒には美術の喜びを味わわせ,将来にわたる基礎的な能力を適切に身に付けさせる指導が求められています。中学校の美術は,社会とのつながりを前提としながら,生涯学習の美術の基礎を培うことになります。8*1)河合隼雄『子どもと教育河合隼雄著作集7』岩波書店1995*2)鷲田清一『待つということ』角川選書2006*3)文部科学省『中学校学習指導要領解説美術編』日本文教出版2008