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概要

造形のABC

6子どもの表現子どもの表現幼児期の子どもは,絵をかくことが運命付けられているように見えます。「成長」という大きな流れに運命付けられた私たちは,そのときそのときを表現して生きています。絵をかくことも,ものをつくることも,体に宿ったものであり,ときに表現したいという欲求にあと押しされて表出されるのです。これは,人間が生来より体内に宿している表現欲求です。「かきたい・つくりたい」というのは,極めて自然なことなのです。「欲求」は,のどの渇きから水を渇望するというように,表現したいという渇望した内面から立ち上る力であり,かきたい・つくりたいという「思い」です。「欲望」も同じように,「~したい」「~ほしい」と欲する気持ちでは似ています。欲求と欲望この「~したい」という表現欲求を生かした題材や授業の展開を設定をすることができます。しかし,子どもたちが喜ぶからといって,どんな授業でもよいというわけではありません。「欲望」に根ざした授業は好ましくありません。子どもの身の周りには,大人の都合で与えられている「欲望」を誘う世界があるからです。例えば,TVゲームやコンピュータゲーム,TVアニメのキャラクターなどを,子どもは好みます。これらを使っての題材も考えられますが,喜ぶからといって,そのまま題材化するためには,よく吟味する必要があります。例えば,「ニセ札づくり」として題材化した授業ではどうでしょう。楽しくて何億円札を何枚もつくる子どもたちを想像してみてください。そこに先生として違和感を感じるかどうかです。欲望は,本性に根ざして我々人類がつくり上げた虚構です。欲求は人間の内部に潜む渇きにも似たものです。子どもに求めるものが,表現欲求に根ざした「欲求」か,虚構の「欲望」の「こうしたい」であるかの見極めをするのは,大人の大切な仕事です。*)竹田青嗣『自分を生きるための思想入門-人生は欲望ゲームの舞台である』芸文社19929