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概要

造形のABC

7子どもの主体性を育てる自分が決める自分で決める先生の判断で作品の内容が決まるとなれば,子どもは「これでいいですか」と,先生に許可を求めることになります。このような関係では,先生が,子どもの作品の「よし悪し」を決めてしまうことになります。創造的な活動の主体は「自分」ですから,最終判断は子どもに委ねられることが大切です。子どもの主体性を第一に考える「題材」は,先生が決めます。ですから,子どもがつくり出す喜びを味わい,資質や能力を育てることができる題材にすることが大切です。子どもは題材の提案を受けて,自分の感覚や活動をもとに「主題」を決めます。子どもにどこで委ねるか,委ねたあと先生は何をするのか,授業の展開とともに考えることになります。製作時間の決定や場の設定は先生の主体的な領分です。個が生きてはじめて根底にあるのは「個」の能力であり,その可能性です。ハーバード・リード*1)は「人間は本来あるところのものになるように教育されなければならない」といい,民主主義社会において教育の目的は「個人の特性の発達を促すこと」としています。個人の独自性が認められてこそ,社会にとって意味あることなのです。民主主義の基本は個人が個人として尊重されることです。鬼丸吉弘は「民主主義と美術教育」*2)を取り上げて,「民主主義は人間の個性を抹殺した画一化や平均化を目指すものであってはならない」と強く主張しています。絵の世界においては,造形上の固定した法則などはないのです。様々な造形形式があり,主体者としての製作者は造形形式を選んだり,新しい形式を生み出したりしてかくことができるのです。民主主義の反対語は独裁主義です。先生が独裁者になってはいけません。10*1)ハーバード・リード著・植村鷹千代ほか訳『芸術による教育』美術出版1953*2)鬼丸吉弘『創造的人間形成のために』勁草書房1996