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概要

造形のABC

12「想像」から「創造」へ作品をつくることは自分をつくること人間は死ぬまで成長します。子どもだから成長するのではありません。この時代に生を受けて,どう生きるかが問われています。「想像する」ことや「ものをつくる」「絵をかく」といったことは,生まれながらにして人間に備わっている力です。ですから,作品をつくる過程で育つもの全てが生きる力となって結実されるのです。「人間がなぜ生まれたのか」と人間が存在する理由を考えるとロマンを感じます。系統発生と個体発生を考え合せたりすると,途方もない時間の流れといまこうして生きている意味を考えさせられます。想像力が人間を人間にした人間に備わった能力の一つに「想像力」があります。佐藤学は「想像力は,人間存在の根源的な欲求に根ざした能力である」*1)として,人類が生きるために必要不可欠な能力としています。さらに,村上龍は「人間は想像する,あらゆる動物のなかで,想像力を持っているのは人間だけだ」*2)といい,非力な人間が大型獣などに打ち克ち生き延びるには,予測や表現,伝達,確認などが不可欠であり,それらを支えていたのが「想像力」だと加えています。その想像力をポジティブに発揮すると芸術や科学を生み出し,ネガティブに発揮されると恐怖や憎悪という形で表われるのです。現代社会において,根源的な能力として「想像力」は育てられているのでしょうか。ここから考えることがありそうです。星空を見ながら星座が生まれ,物語が生まれたことを考えると,他者からイメージを享受されるだけではなく,より能動的な「想像」が求められています。想像する「こと」でイメージが生まれ,想像する「もの」がイメージ化され,次への行動を指し示すのです。生命の誕生から,そして,人類が地上に誕生してからつながる「想像力」のリレーです。「想像力」は人間として生きる力の根源なのです。*1)佐藤学『子どもの想像力を育む-アート教育の思想と実践』東京大学出版会2003*2)村上龍『インザ・ミソスープ』読売新聞社199715