ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

造形のABC

16造形遊びの材料や場所の意味子どもの育ちと「材料」「場所」低学年の造形遊びは,身体性(手だけではなく体全体の感覚を働かせて対象と関わること)と,「材料」が表現活動を支えることになります。「材料」が自分の思いを実現する大切な「もの」になるのです。中学年で「場所」が加わります。この「場所」は,単に「活動場所」ではありません。「いま,ここ,わたし」の「ここ」を表します。「ここ」とは,「場所」そのものに,活動する人との関係性が存在するような「お気に入り」の場所のことです。子どもたちが基地ごっこをするために,校舎の片隅につくり出されるような「場所」*1)なのです。子どもと「対象」との関係を見つめていくと,子どもの文化や世界が拓かれていきます。子どもの時間と造形活動「時間」(状況)も子どもの造形活動に大きな意味をもっています。中村雄二郎は,ミヒャエル・エンデの童話をもとにしながら楽しい遊びに満ちた「子どもの時間」を大人の時間と区別しています。*2)その大きな違いは,子どもの時間は「空想」を育むものだというのです。機械仕掛けの精巧なおもちゃではなく,二つ三つの本の箱,破れたテーブルかけ,一掬いの小石などがあればあとは空想の力で,いろいろ遊ぶことができるというのです。造形遊びのように材料にふれる手触り(触覚)も空想(想像力)も「子どもの時間」に欠かすことのできない大切なものです。そして,「時間」は心(全人間的・全身的な感覚)で感じるもので,単なる時間の長さではないのです。「風が吹いたら,揺れてきれいだろうなぁ」など,期待してわくわくする時間も「子どもの時間」なのです。「時間どろぼう」のように大人は「子どもの時間」を奪い取ってはいけないのです。トポス*1)中村雄二郎『共通感覚論-場所の諸問題』岩波書店1979*2)同『共通感覚論-時間と共通感覚』岩波書店197919