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概要

造形のABC

18感じ取ること図工の「鑑賞」は感じ取ること「鑑賞」と聞くと,「見ること」がすぐに浮かんできますが,感じ取り,味わうことの意味です。温泉に入って,「ふーっ!」と漏らす身体性を伴う,あの味わう感覚です。鑑賞を「見る力」「観察力」を育てることと限定してしまうと,再現的な絵の題材ばかりが多くなり,子どもの思いや発達を無視した指導になってしまいます。大人の論理だけで考える題材では,子どもの思いに届きません。鑑賞の活動では,先生自身の感性も大切にして「子どもの感性を否定しない」「全てを受け入れる」という大人の姿勢からしか,子どもの鑑賞の能力を育てることはできません。子どもと大人の「見る」意味のちがい子どもは,大人のように外面的なもの,目に見えるものだけに傾きません。イメージしながら見る力をもりょくっています。それは「ニュアンス力」(相手のニュアンスを受け取る力)「察する」「想像する」などといわれる力です。ですから,お話を聞いただけで,イメージする楽しさを味わうことができます。また,木片に目や口の印を付けただけで,その木に命が吹き込まれ物語をつくり出すことができるのです。問わず語りのつぶやき心の動きは「つぶやき」になります。「感じたこと」を話すのはそのあとです。「沈黙」が芸術の基本です。大村はまは,子どもから問わず語りに出てきた言葉の中にしか,「子どもの真実・本心は読めない」*)といい,自分から話し出すときに,その「ひと」が見えるともいいます。ですから,よさや美しさに出合うことで,つぶやき(モノローグ)が生まれ,そこから対話(ダイアローグ)へと発達するのです。形式的な対話は,鑑賞の活動を形骸化させます。子ども自身が感じ取って思わず出る,「問わず語り」を大切にしませんか。*)大村はま『日本の教師に伝えたいこと』ちくま学芸文庫200621