ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

造形のABC

30題材と子ども題材と子ども観新しい学力観を踏まえて,「平成」からの図画工作*1)は大きく様変わりしました。新しい学力観では,子どもの発達に応じ,子どもの表現を理解し,子どもの思いを大切にする指導が求められました。しかし,「1年ではアサガオをかく」「運動会の後はかけっこの絵をかく」「例年通り消防車をかく」など,定番化した題材が毎年繰り返されるといった悩みを打ち明ける先生がいます。また,「まるで,胃カメラをくわえたような鍵盤ハーモニカが並ぶ同じようなポーズの版画」などと揶揄された同様の指導も続いています。ここにあるのは「指導のしやすさ」であって,子どもの資質・能力を育てるという視点が見えないということです。また,子どもの発達に応じて発揮される資質・能力を視覚優位の「見えるものを絵にする」という窮屈な絵に表そうとしている現実があります。「資質・能力」をもとに題材を考えることです。「指導のしやすさ」という先生側だけの考えでは,子どもの資質・能力は発揮されないままの授業になってしまいます。子どもは失敗を乗り越えながら,新たな能力を身に付けるのです。身に付けた能力が新たな資質となって,次の課題に向かうのです。子どもは,「背伸び」と「ジャンプ」*2)を繰り返して成長するのです。題材に埋め込まれた文化的価値を自らの資質・能力をもとに見出して,自らの力とするのです。「援助」と「支援」穴に落ちて苦しんでいる人に対して地上から手を伸ばして引き上げるのが「援助」で,どこか上から目線のサポートのように思えます。「支援」は,自らに穴に入ってお尻を押し上げることです。先生の役割は,題材に埋め込まれた資質・能力を掘り起こす子どもを「支援」することです。相手の立場で考える指導(支援)が求められています。*1)西野範夫『新しい学力観に立つ図画工作の指導の創造』日本文教出版1993*2)佐藤学『学校を改革する-学びの共同体の構想と実践』岩波ブックレットNo842 201233