ブックタイトル造形のABC
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造形のABC
1「指導がうまくいかなかった!」がスタート!先生のぼやきおやおや,先生が「こんなに親切に指導したのに,子どもがいうとおりにしてくれない」「研修で習ったことを,大学のときに教えてもらったことを,自分が子どものころに習ったようにしてみたが,うまくいかなかった」「あのとき,あの子があんなことしなければ,うまくいったのに」など,ぼやいています。どれも先生の都合だけで,考えているのでないでしょうか。まずは,「うまくいかなかった」と感じたことが先生としての成長の第一歩です。子どものせいにしないことです。そして,指導はうまくいかないことの方が多いと反省し,考えることです。うまくいかないのは,子どもの思いと先生の思いにズレがあるからです。そのズレは「先生は予め自分なりに決めた流れや意図があったのに,子どもがそのことを理*)解せず勝手なことをした」というものです。(反省的実践者)問題点を考えてみましょう。1先生の設定した目標が,子どもの実態とずれていた(目標の難度,目標達成するための時間や材料・用具の不足など)2先生は手続き通りに一つ一つ進めようとしたが,子どもは自分なりにしたかった(指示や手続きに要する時間が長い,子どもの興味・関心と想定が違ったなど)3先生の指導に不足があった(「前の学年ではうまくいったのに」など,過去の事例とのちがいや「~しなければならない」など,固定的な観念に縛られ子どもが見えなかった)などいくつか考えられます。先生のめざす子どもの姿と子どもの考えや思いの間にズレが起こります。そのズレを受け止めつつ判断し対応するのが授業のおもしろさです。ですから,まずは,ズレに対する違和感をもつこと,自分の指導を疑うことが,よい授業へ向かう第一歩です。ズレをズレとも思わず指導を続けているとしたら,図画工作や美術から背を向ける子どもたちが,一人二人と増えていくことになるのです。学級全体にかきたいことが浮かばない子どもたちが多いとなれば,「やってみたい」「かきたい」という初発の動機付けが弱いということです。「題材がおもしろくない」のではありませんか。「行為」や「遊び」を題材の呼び水として行い,「上手い・下手」が生まれない表現する楽しさを実感させる授業が考えられます。優劣の差が生まれる題材や技能だけが求められる題材,興味の湧かない題材になっていないか,題材の工夫が問い直されています。教科書に掲載されている作品は結果です。指導のプロセスを知るには,情景写真などに写り込んでいる環境(材料や用具など)や子どもの手元などから情報を得ることで,目の前の子どもたちの喜びの姿を想像して,教科書を参考にしながら自分の学級の実態をとらえ,先生自身のオリジナリティを発揮して,授業を構築することです。「いまの私の指導はこのくらい」と行き詰って,留まるとそのあとの成長はありません。「明日の方が今日よりいい指導ができるはず,だからもう少しやってみよう」と歩みを止めないことです。「あなたの知らないあなたに明日は会えるはず」44*)藤岡完治ほか『成長する教師-教師学への誘い』金子書房1998