ブックタイトル造形のABC
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造形のABC
10鑑賞の学習は?:話し合いがないと「鑑賞」とはいえないの?「鑑賞」として,友だちの作品を見合うことをしますが,気付いたことをたくさん挙げて,それで終わってしまいます。たくさんの気付きから,どのように話をまとめればよいのでしょうか。:まずは,「鑑賞はしなくてはいけないのか」「話し合うことが鑑賞か」など,鑑賞に対する自分の考えをもつことです。表現と鑑賞の活動は常に一体です。表現することは見ること,感じることも併せて行われています。話し合うことが大切なのではなく「感じ取る」ことが大切です。独立した場面を設けて,話し合うことは言語活動の充実とともに,気付きが生まれ多くの見方や友だちのよさも発見できます。学習指導要領の鑑賞の指導については「指導の効果を高めるため必要がある場合」とされ,子どもや学校の実態に応じて独立して行うことができますが,その前提に「表現」との関連を図る大切さが明記されています。低学年では「自分の作品や身近な材料を楽しく見ること」であり,その方法は,感じたことを話したり聞いたりして,形や色,表し方のおもしろさ,材料の感じなどに気付くこととなっています。見たり触ったりすることを通しておもしろさやよさ・美しさを「感じ取る」ことなのです。ですから,発表会のような形式をとらなくてもいいのです。交流の場面が自然発生的に生まれることに意味があるのです。先生の働きかけとして行うとしたら「場の設定(材料の場所や互いの作品が見合える配置)」が考えられます。鑑賞の能力の評価にあたっては,子どもの自然な発露の「つぶやき」を聞き取ることが重要となります。形に残らない,全ての子どものつぶやきや表情をとらえるのは困難であると考えるのであれば,簡便な付箋や数行の文字情報を集積することも考えられます。鑑賞の活動は,形式だけの対話では,子どもの思いは伝わってきません。まずは,先生の考えが「鑑賞活動ありき」ではなく,はじめに子どもの表現の喜びがあり,その喜びを伝えたい子どもの思いをどう汲み取るかです。巷で行われている「対話式鑑賞」が成立するのは高学年からで十分です。特に低学年は「つぶやき」を大切にすることです。低学年や中学年は,自分から進んで話したいこと,聞いてほしいことが交流できる場を設けることが重要なのです。大村はまは『日本の教師に伝えたいこと』*)の中で「教師が聞き出すのではなく,子どもから問わず語りに出てきたことばのなかにしか,子どもの真実・本心は読めないと思います。」(下線筆者)と書いています。先生が聞きたいのは「建前のことば」か「本心のことば」かです。子どもが何をどう見ているのかが問われています。子どもたちの発達を考慮しつつ,話し合いから何を求めるのかを明確にすることです。何より「鑑賞の能力」が育つことが大切なのです。50*)大村はま『日本の教師に伝えたいこと』ちくま学芸文庫2006