ブックタイトル造形のABC
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造形のABC
1なぜ,絵をかくの人間はなぜ絵をかくのか人類は,自然の世界とはちがう「文化の世界」をつくり出してきました。この「文化の世界」を「人間の想像力による創造の産物である」*1)というのは,心理学・芸術学・教育学に大きな影響を与えたロシアのヴィゴツキーです。絵をかくには,身体的な機能の発達とともに「想像すること」が必要です。ですから,人間が他の動物とは違う進化を歩んだことで「芸術」の道も拓けたのです。林健造は,人間だけの特徴について「2本の足で立つ~完全直立歩行」「手先が器用~拇指対向性(親指と他の4本の指が向かい合っている)」「イメージで行動する~表象化」*2)の3点を挙げています。身体の発達が「表現」を生み出す支えとなり,想像(イメージ)が象徴化や抽象化する働きを担い,文字や絵,記号などをつくり出し,情報を伝達する術を身に付けることができたのです。表現は自分をつくる東山明は,人類が絵をかいたり,つくったりする理由を,1ものや道具をつくるため2装飾本能のため3自己を表出する根源的な欲求のため4伝達や記録のため5宗教目的のため6儀式や王の権威を示すための6点を挙げています。*3)子どもの絵は,「なぐり描き」のように自己を表出する内的必然性によって生まれます。そして,絵などの表現は成長に伴って発達し,自己を築く人格形成の大きな支えとなるのです。かくこと,つくることそれ自体が大切なのです。表現の発達絵の発達の道も同じです。誰もが大人になるように,誰もが「なぐり描き」を経験し,かくことの喜びを知り,それを人に伝える喜びを一緒に獲得して,絵をかく意欲は継続され,さらに花開いていくのです。大人になると表現方法の幅が広がり,言葉や体でも,自分らしさを表現できるようになっていきます。4*1)ヴィゴツキー著・広瀬信雄訳『子どもの想像力と創造』新読書社2002*2)林健造『幼児の絵と心-子どもからあなたへのメッセージ』教育出版1976*3)東山明・東山直美『子どもの絵は何を語るか-発達科学の視点から』NHKブックス1999