ブックタイトル造形のABC
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造形のABC
2子どもの成長と表現かくことは自分の力を感じること幼児期の「なぐり描き」を経て,頭足人が生まれます。この頭足人に至る前に,「円形と直線の発見」があります。円形は,ペンをスタートさせて,また,同じところに戻り閉じることで形ができます。直線も,意図的にスタートの場所を決め,ゴール近くなって意識的に離すという眼と手や腕の筋肉が連動して生まれるのです。おおよそ2~3歳ごろにできるようになります。でもこれは,大人に教えられてかけるようになるのではありません。自分の力で獲得し,身に付けるのです。表現することは生きている喜び子どもにとって円形や頭足人などの「意味ある形」を生み出した瞬間でもあるのです。それは,つかまり立ちから立って歩くのと同じくらい,子どもにとって画期的な表現の獲得なのです。また,絵をかきながら「ブーブ」「ワンワン」「ママ」などと発し,言葉も同時に獲得することになります。子どもはこれらの所作を通して自分の能力を感じ取ります。そのとき周囲で「すごいね」「そうなの」など,肯定的な応答があれば,子どもは「自分のかいたもの」でコミュニケーションができることを経験することになります。ですから,身近な人や事物をかくことで,ともに共有できる喜びを感じ取るのです。かくことが喜びになるこのように子どもは絵をかくことに留まらず,表現する喜びを周囲の温かな関わりから獲得して成長します。自分の力で,自分の思った形や色をつくり出すことが創造の原点となっています。これは,図画工作の教科目標の中心となっている「つくりだす喜びを味わう」ことにもつながるものです。つまり,他者との共感のもとで,主体的に表現活動を行うことは,子どもにとって「快」の感情に包まれたものなのです。*)鬼丸吉弘『児童画のロゴス-身体性と視覚』勁草書房19815