ブックタイトル造形のABC
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造形のABC
3幼児の造形表現子どもの絵は「かく」大人の絵は「つくる」幼児がはじめてかく線や点を,通称「なぐり描き」といいます。身体性に導かれた運動のような絵です。こうして,おおよそ3歳未満の表現は,身体性に導かれ自己の内面から表出されるような生命の軌跡です。一見,大人から見ると無意味な遊びのように見える行為も,主体的に新たな能力を,自ら身に付けていく大切な営みなのです。この主体的なプロセスを大人の都合で,教えて,促成させても身に付きません。かえって指示待ちの受け身の姿勢をつくってしまいます。自分から進んで取り組もうとする主体性は,成長にともなって,様々な能力を身に付けることに役立つのです。主体性は「自分」をつくるエネルギーなのです。「創」のこと「創」*)という漢字には,1はじめに2つくる3傷の三つの意味があります。その成り立ちは「倉」は「ソウ」という読みを表しますが,「リ」は「傷つける」ということです。「布」を刀で切るところから「初」が生まれたように,「創」は自然に対して人為的な行為を刻むことで「創造的な世界」が拓かれることを意味しています。幼い子どもが行う,「なぐり描き」のように紙を傷つける行為は,創造の第一歩といえます。ですから,か子どもの絵は「掻く」にも似て,「生きている証」を刻んでいるのです。他方,大人の絵は「つくる」といえます。これまでに得た知識や経験から,様々なものを組み合せて絵を構成することになります。自分の内面を映し出すという情動的な行為でありながらも,理知的な行為でもあるのです。人類にとって「創」は,はじまりであり,命の温もりを大地に刻む「創造」であり,新たな文化や文明を築きあげてきた証なのです。6*)山田勝美『漢字の語源』角川書店1976