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概要

造形のABC

4小学生の絵の表現人は二つの絵をかくある対談で,林健造は「人は人生に2枚の絵をかく」といい,1枚は「子どもの絵」で,もう1枚は「大人の絵」というのです。*1)大人の絵は,子どもの絵が発達したもので,心身ともに大人へ成長した証です。子どもの絵から大人の絵に向かうスタートに位置するのが,およそ9歳前後としています。社会学や言語学,脳科学なども心身に大きな変化をもたらす時期としています。このころから子どもの絵は,「見えているものを見えているようにかく」という再現的で,視覚的な表現の「大人の絵」になっていきます。この絵の特徴の一つに「重なり」があります。見えているものとものとの重なりが意識され,視覚的な「奥行き」が表われます。つまり,奥にある物は手前の物に隠れて,欠損したような表現になります。ですから,これ以前の子どもの絵には「重なり」は見られません。人物の大・小はあっても,それぞれは大切な存在としてかかれるのです。その結果,展開図的な子どもらしい表現になるのです。子どもの絵は,子どもの成長の履歴食事の風景などでは,真上から見た視点で,人物などが寝ているようにかいてある展開図のような子どもの絵から,斜め上の1点から見下ろしたような大人の絵に移行していきます。これは,存在するものを一つ一つ,近づき触れるようにかく子どものかき方と,見えるものを見えるようなかき方(重なりや奥行きなど)が,混在する時期を過ぎて,対象から離れ,斜め上の1点から見えるように説明的にかく「大人の絵」になるのです。絵は,それぞれの「成長の履歴」です。ですから,他と比べるものでもありませんし,大人のかき方を押し付けるものでもありません。絵をかくのは子どもです。子どもを主体者として尊重するところから指導がはじまります。*1)林健造『幼児の絵と心-子どもからあなたへのメッセージ』教育出版1976*)ふじえみつる『子どもの絵の謎を解く』明治図書20137