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概要

子どものABC

6待つ時間待つ時間の意味絵本「ふたりはともだち」1)の「おてがみ」の中には,私たちにとって忘れてはならない大切なものがあります。「かえるくん」は,一度も手紙をもらったことのない「がまくん」に書いた手紙の配達をかたつむりに頼みます。「がまくんとかえるくん」は並んで,4日もかたつむりを家の前で待ちます。情報が瞬時に行きかう時代でも「待つ」という行為は同じです。「待つ」には期待が込められています。「春を待つ」「帰りを待つ」などです。「待つ」ことの中に期待と希望があふれているのです。がまくんとかえるくんにとって,ゆっくりと歩むかたつむりをいっしょに待つ時間こそが大切だったのです。子育ても「待つ時間」なのかもしれません。口を出さない,手を出さない,目をかけるという子育てはなかなか容易ではありません。現代のように競争社会では子どもを「待つ」ことができず,子どもを追いたて,挙句の果ては親が代行してしまいます。見守ること,待つことは,手や口を出すより,はるかに難しいことですが,とても大事なことです。大切なのは,子どもといっしょに「今」を共有することです。私たちにあるのは「今」だけです。未来も過去もありません。今の積み重ねが過去となり,記憶として,自分の体内に残っていきます。未来は「今」の連なりの先にあるだけです。日々の何気ない時間が自分をつくっているのです。101)アーノルド・ロベール著・三木卓訳『ふたりはともだち』文化出版局1987*)鷲田清一『「待つ」ということ』角川選書2006