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概要

子どものABC

34♪歌詞に込められた思いしゃぼん玉・赤い靴野口雨情が作詞した童謡「しゃぼんだま」3番の歌詞には「飛ばずに消えた」とあります。そして,「風風吹くな」と連なっていきます。この歌詞には,野口自身の生まれてまもなくして亡くした子どもへの,父親として思いが込められているといいます。同じく野口の童謡「赤い靴」にも,子どもに寄せる悲しい思いが込められています。この曲は,北海道の開拓に向かうある一家の話を聞いて,作詞されたそうです。一家は,厳寒の地での我が子の健康を案じ,幼い娘を横浜の外国人牧師に預けたといいます。娘への悲しい思いが,「異人さんに連れられて……」という歌詞と,「赤い靴」に映し出されています。思いは詩や歌となって,人々の心に感動を届けます。発信された目に見える現象だけでなく,その背景にあるものを感じることが,感動の深さとなって立ち現れます。発信することに重きが置かれていますが,本来は発信を受け取る側の「感性」が同時に問われているのです。夏目漱石の小説「草枕」では,詩人や画家などの「芸術」が住みにくい世の中を心を豊かにする役割を担っているといいます。人が人を思い,感情をイメージにして伝えることができる,詩や小説,絵画などの芸術のもつ深みが,私たちの心を打つのです。育てるべき感性は,子どもだけではありません。大人こそが感性豊かでなくてはなりません。ほら,子どもたちの所作や驚きに心を寄せて,発見した喜びや驚きを一緒に分かち合うことから始めませんか。40*)夏目漱石『草枕』春陽堂1907*)レイチェル・カーソン著上遠恵子訳『センス・オブ・ワンダー』新潮社1996