ブックタイトル子どもとつくる図工の時間

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概要

子どもとつくる図工の時間

33Chapter 5 ● 授業のひろがりかったのですが、体重をかけて粘土板の上で伸ばす方法をいっしょにやってみたところ、目にわずかな輝きが見られました。そして粘土のやわらかい感触のおかげか、次第に主体的な活動へと変わっていったのです。粘土を伸ばしてどんどん長くするという触覚的な活動から、「楽しい」という思いが芽生えたようです。 次に、やぶいた紙の形から発想して絵に表す題材を行ったときには、ゆっくりながらも最後までやり遂げることができました。 高学年になる頃には、学習に対して前向きで図工も大好き、おもしろいことを言ってはクラスを和ませる存在へと成長しました。伝播する言葉の力 ある日、いつもは穏やかに過ごしている子どもが突然泣きだして「もうやりたくない」と言い始めました。表したい思いはあるのに指先が思い通りに動かない、という経験をたびたびしていたようでした。 この子に変化があったのは、紙を開く仕組みを使って思いついたことを表すという題材を行ったときでした。「爆弾が爆発すると魚に変わる」というアイデアを思いついたようで、赤色のパスを強くこすりつけてかいていました。強くこすりつけた赤色の感じと爆発する様子がぴったり合った、その子らしい発想のおもしろさがつまった作品になりました。 クラス全体に紹介すると、「力強い線だね」「爆弾から魚に変わるアイデアがいいね」といった声が他の子どもから聞こえてきました。それ以来、その子に「アイデアの達人だね」と繰り返し声をかけ続け、学年が終わる頃には自分の作品を満足気に友だちに話す様子が見られるようになりました。 教師の励ましの言葉は、いつしか子どもたちも使うようになり、「アイデアがいいね」「楽しそう」「いっしょにやろう」というやりとりが増えていきました。普段の生活でも認め合う場面が見られるようになり、クラスが一体となる瞬間が次々に増えていったのです。図工がクラスをつないでいく 図工だからできる、個を見つめる指導があります。個を大切にして授業を進めると、クラスが一体になる瞬間を時折感じられるようになります。友だちの行為や作品を見る観点が変化し、友だち同士で認め合う回数が増えていきます。そして、クラスが持続的につながっていくのです。図工の授業を通して子どもたちの中に生まれた、授業を待ち遠しく思う気持ちや認められたという喜びが、途絶えることなく持続することで柔らかな雰囲気のクラスへと変わっていくのです。図工には、そんな力が秘められています。