ブックタイトル子どもとつくる図工の時間

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概要

子どもとつくる図工の時間

5Chapter 1 ● 授業研究しよう授業の真ん中に、子どもへのメッセージ 授業に欠かせないものって何でしょうか? 私は、教師から子どもたちへのメッセージだと考えています。メッセージというのは、「こんなふうに育ってほしい」「こんな見方や考え方を身につけてほしい」「こんなことに気づいてほしい」という教師の願いです。このメッセージを子どもたちに届けることが、授業の中核にあると思うのです。 ただ、「○○に気づいてね」「○○という考え方もあるよ」といくら言葉で伝えても、子どもたちが実感をもって理解できるとは限りません。ですから、メッセージを「授業」という形に落とし込んで、子どもたちに手渡すのです。教師が「こんなことやってみない?」と提案することから始まり、子どもたち自身が活動を通して学び、いつのまにか先生の願いにたどり着いている――それが理想的な授業の姿です。 授業のあり方は教科によって異なります。図工でいえば、造形活動(=形や色、材料などに関わりながら、つくったり表したりすること)を通して学びます。つまり、図工の授業とは、「教師から子どもへのメッセージを、造形活動に落とし込んだもの」なのです。授業は、こうやって考える では、「メッセージを造形活動に落とし込む」すなわち「授業を考える」にはどうすればよいのでしょうか。アプローチの仕方はいろいろあります。 ちょっと私の授業を例に挙げてみましょう。五年生で「オモテとウラ」という授業をしたことがあります。小学校には表門と裏門がありますが、中には裏門から通う子どももいます。「他の人には『裏門』でも、その子にとっては『表門』なんだな」とぼんやり考えていたとき、「『人によっていろいろな見方がある』というメッセージを込めた授業をしよう」と思いついたのです。 この授業では、誰かが決めた表裏ではなくて、「ここから、こういうふうに見たら表」という基準を自分が決めることを経験してほしいと思いました。「どちらが表で、どちらが裏か」という問いが子どもの中に生まれるにはどうしたらよいかを考え、いろいろな角度から作品を見られるほうがよいと思い、立体に表すことにしました。 また、活動の過程で「つくる」「眺める」「つくりかえる」を繰り返していくだろうから、材料は可塑性のある粘土にしよう――というように、具体的な部分を肉づけしていきました。 授業を考えるための入り口はいろいろあります。届けたいメッセージが真っ先に頭に浮かぶこともあれば、「今日は画用紙しかないけど、何ができるだろう」から始まって伝えたいメッセージに結びつけることがあってもかまいません。大切なのは、活動の内容がメッセージに結びついているか、なのです。授業は、「子どもといっしょに」つくるもの メッセージを届けたい相手は言うまでもなく、目の前の子どもたちです。このことが抜け落ちてしまうと、教師が一方的に考えを押しつけるだけの授業になってしまいます。 私は、授業を考えるときあえて「余白」授業ってなに?