ブックタイトル図工・美術でゆたかなくらし
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図工・美術でゆたかなくらし
子どもの人生と一人ひとりの子どもに寄り添う─ できた! それを待つ時間と場所がここにある─一人ひとりの特性を3大切にする 使えるものをつくった時は「さっそく使いたいです」と言ってくれました。友だちからの「とにかくいろいろやってみようよ」という言葉に励まされ意欲をもてた子どももいます。時間を確保することで「あきらめないで最後まで頑張ろうと思えるようになった」と言ってくれた子どももいます。保護者の方からも「子どもの感性を引き出してくれたことに感謝します。本人の表情からも満足していることが伝わってきました」といった言葉をいただきました。 一人ひとりの特性に合わせて、場の設定や、材料などの備え、時間的な見通しを考えることが、よい準備であり、子どもたちの可能性を引き出す実践に欠かせないものだと考えています。一人ひとりの特性に合わせた授業づくりは一見大変なようですが、誰かにとって分かりやすい授業は、より多くの子どもにとっても分かりやすい授業になるはずです。そうした授業づくりが、子どもたちの自己肯定感を高め、豊かな人生を過ごす力となるのではないでしょうか。 いつも心がけていることは、子どもたちに寄り添うことです。そのために、活動の必然性や身近にあるものを使うこと、子どもが活動に見通しをもてること、失敗してもやり直しを保障することなどを大切にしています。 学校ではお祈りの時間があるので、そこで使うしおりをつくる活動を実施しました。好きな聖句を選び、学校のある大磯の自然を感じてしおりに表す活動です。またサマーキャンプで使うバンダナを自分で染める活動や、社会科と連携し、岩崎山の泥岩を生かして自分たちで粘土をつくり縄文土器を製作する活動もしました。 失敗もあります。ある活動で大きなボトルから小皿にニスを自分で取り分けるとき、入れ過ぎた子どもがいたので「次の人に半分あげよう」といって皿を持って移そうとしたところ「減らすならや?らない」とすねてしまったのです。彼が入れたニスの量は「やる気の量」だったんだと気付きました。2子どもたちに寄り添うために生活に密着した題材を設定する生活に密着した題材設定は、分かりやすく、何をどうすればよいのか、子どもがイメージしやすくなります。考えることや活動することの数を極力絞る分からないことや不鮮明なことによるストレスをできる限り減らす手立てが重要です。材料・用具類の場所などをはっきりしておくといったことから始めましょう。つまづきを保障する活動の途中で引っ掛かってしまったとき、待ってあげること、やり直してもいいこと、何につまずいたのか寄り添いながら聞くことが、安心して表現できることにつながります。イメージと少しずれただけで意欲を失う子どももいますが、粘り強く声をかけることで、気を取り直すことができました。一歩踏み出す勇気をもてるように自信がもてず、思いをなかなか表せずにいる子どもたちにとって、仲間と「つながる」協働的な学びの場は重要です。「みんなと一緒でいい」ではなく、友だちのよさに気付いたり、「こうしたらいいよ」と友だちから背中を押してもらったりして、「自分らしさを表せる」雰囲気づくりと、安心して取り組めるステップを保障していきましょう。先を急がず時間をしっかり確保する、一つひとつ体験していくようにするその子のペースやリズムを尊重しつつ、実体験を通した学びが、確かな学びにつながっていきます。言葉にならない声を聴く聞きたいことがまとまりきらなかったり、聞くことに自信がもてなかったりしている子どもがいたら、「〇〇したいのかなぁ?」って声をかけたいですよね。授業前に作品を見ておいたり、その日の活動初期段階で、迷いそうな子どもを確認しておくと、見えてくることがあります。子どもたちの「言葉にならない声」を聴き、すっと寄り添えたら、きっと何かが変わるでしょう。「やりたい」と言うことは、まずやらせてみるための準備と度量子どもたちが、「?していいですか?」「この材料(用具)を使って〇〇したいです」と教師が想定していなかったようなことを思い付き相談してくることがあります。その子どもはきっとその瞬間が興味関心MAX なのでしょうから、危なくない限りまずはやらせてみる。それができるだけの活動予測と準備をした上で、「いいよ。やってごらん」と言える度量をもちたいですよね。 本学園は、「学校が子どもを選抜する立場ではなく、子どもたちがありのままの自分を生かし、そこからさらに一歩成長していける学校」という理念のもと、オルタナティブ教育(子どもたちの多様なニーズに応えられる多様な教育力)、インクルーシブ教育(子どもたちのさまざまな個性を包括的に受け入れ適応力を育む教育ありのままの自分を生かす1 力)、レジリエンス教育(困難な状況、自信喪失した心の回復力を育む教育力)を目指す学校です。 このような環境の中で、図工・美術教育の果たす役割がいかに有用であるか、具体的実践例を挙げながらご紹介いたします。36 37