ブックタイトル形 forme 302号
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形 forme 302号
はありません。スーラは印象派に科学性と理論とを与えたという評価は、定着していますし、近代の画家のなかで、彼ほど真摯に色彩科学を勉強した人はいないはずです。シニャックなど彼に啓発された画家も少なくありません。けれども他方では「点描もいいけど、時間がかかるから閉口だ」と、こぼした人もいますし、モネやルノワールが典型ですが標題に掲げたようなことばで批判した人もいます。学習指導要領に「対象を見つめ感じ取る力」「自然や対象を深く観察し」のことばが見えます。他ならず科学においても、自然科学は、まず現象の忠実な観察から始まるという考え方は普遍的な真理とされてきました。かつて、科学技術と美術とは同根でした。「芸術は長く人生は短い」ということばがありますが、これは古代ギリシャの医聖ヒポクラテスのことばに由来します。「技術」ということばが、翻訳の過程で「芸術」になったようです。美術に志す方々も古に倣って、もう少し色彩学に関心を寄せられたらどうでしょうか。ただ、この点については色彩学者の側にも責任があります。色彩科学にはスーラの後、精緻化した分野がありますので、学者たちはそれを教えることに夢中になってしまい、美術との関係に無関心になっているようです。近江源太郎おうみげんたろう一般財団法人日本色彩研究所理事長、女子美術大学名誉教授。女子美術大学教授・学長、日本色彩学会副会長などを歴任著書「〝よい色?の科学」「色の名前に心を読む」「色の名前」「色彩心理入門」「色彩感覚―データ&テスト」「造形心理学」左)グランド・ジャット島からみたセーヌ河(部分)[油彩]ジョルジュ・スーラAlamy/PPS通信社11 | 302 | forme