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概要

形 forme 302号

子どもにとっての意味をつくりだす「この木の形おもしろいなぁ。持って帰ろう……」ふと目を落とした木切れに語りかけられるように惹かれて、思わず宝物にしてしまう。なぜか木切れには不思議な魅力があります。木切れと釘と金づち。これらが出合うと、不思議と木切れに釘を打ちたくなって、そこに形(子どもにとっての意味)が生み出されていきます。昔からある「つくりたいものを実現していく、木切れを主材料とした工作」とは違ったアプローチがここにあります。学びのプロセス1「釘を打ってみたい」という思いから始まる学び大量の木切れと釘、そして一人ひとりに金づちを準備します。木切れと釘に誘われて、子どもたちには釘を打ちたい気持ちがむくむくと膨らんできます。そこで「たくさん釘を打ってみよう」と提案すると、釘をつまんで、金づちを振り下ろし始めます。釘の頭を真っ直ぐに叩くように、慎重に打っていきます。思った以上に抵抗があるのか、おっかなびっくりで力が入りづらいのか、一本一本の釘を随分丁寧に打ち込んでいきます。2材料や用具との対話ここには、材料や用具を扱うことで感じる「体験的な学び」があります。材料や用具の特徴をどんどん吸収していきます。「吸収する」(知る)ことから「できる」(習得する)ことに変容する過程に、行きつ戻りつする(考える・調整する)学びがあるのです。これは造形遊びでの学びにおいて、とても大切なことです。しかし、この時間は決して「練習」ではありません。確かに試行のステップではありますが、すでに素敵な気付きや技が次々に生まれているのですから、「練習―本番」のような題材の捉え方は学習のねらいにマッチしません。釘のよいところの一つに「やり直せる」ことがあります。打ち損じだけではなく、「やっぱりここはやめて、こっちに移動しよう」とか、「もう少し打ち込んでおこう」「高さを揃えよう」などの行きつ戻りつができることです。この点でも木切れと釘から始まる造形遊びは、前述の考える・調整する学びに直結していると言えます。3行為の連続から意味が生まれ、友だちとつながるたくさんの釘があるので、木切れにどんどん打ち込みながら、子どもたちは金づちの名人になっていきます。打つことの心地よさを感じながらリズミカルな動きと共に、いつの間にか楽しげで真剣な、素敵な表情くぎくぎトントン試しながら生まれる〝わたしの形?北海道札幌市立緑丘小学校堀口基一授業実践学びのフロンティア小学校3・4年向きforme | 302 | 12