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概要

形 forme 302号

の魅力と危うさがあるのではという気がするのですが、いかがでしょうか。西尾必要に迫られて身に付いた知識や技能は、ほとんど消えないと思います。実践の中でいろんなことを試す時間はあるので、一度経験すれば、きっと高学年になってできないなんてことはないでしょう。たとえば学習指導要領の低学年の造形遊びの(ア)に、「思い付いてつくること」という文言があるじゃないですか。私はあれがすごく好きで。低学年の「思い付いてつくる」というのは、失敗ややり直しも込みですよね。竹井低学年の子どもだったら失敗と思っていないかもしれないですよね(笑)。西尾その可能性はありますね(笑)。失敗というか、やってみてうまくいかなかった、自分がやろうと思っていたのはこういうことではなかったという場面はいっぱいありますよ。一つのことを最後まで粘り強く活動することは必ずしも必要ではないと思います。今までやってきたことを途中で壊して、次のことをやってもいいんです。それは新しい発想を重ねる経験になったり、学習になったりするし。この時期の子どもの技能は、思い付いてつくるという繰り返しの中から形成されていくものだと思います。竹井そう考えると図画工作・美術でつくりだされるものの中には、次の活動をつくりだす原動力というのもありますね。西尾新たな造形活動もつくりだされますよね。やってみたら面白かったから、もしくは思い通りにいかなくても、次はもっと面白くなるようにいろいろ変えてやってみよう、というような。その「思い」は、今の造形活動だけでなく、もしかしたら大人になってからの、ものをつくる意欲や態度をつくりだすことにつながる可能性もありますよね。子どもと教師の間につくりだされるもの西尾「造形教育がつくりだすもの」には、先生にも関係する部分があると思います。大学で授業づくりの共同研究を数名の先生方としているのですが、この間一つの学校で六年生の鑑賞の授業に取り組みました。そのときに先生が指導書を参考に指導案をつくってきたら、まずワークシートを書く活動が設定されているんです。竹井よく使われてきた方法ですね。作品に出合って、まず見ながら気付いたことを書いていくことを提案していたりします。西尾でも、ワークシートは使わないで、まだはっきりとした文章になっていかない「もわっとした印象」をそのまま言葉にしてどんどん出し合って話し合いながら、子どもたち同士が気付き合えるような授業を提案したんです。そうしたら、そんな授業はやったことがないからものすごく不安だって仰ったんですが、同時に興味をもってくださり実践していただきました。すると、どんどん子どもたちから話がでてきて、先生自身のお考えよりも、もっと作品に迫っていくような話し合いになったんです。竹井ワークシートで文字にしてしまうと取りこぼしてしまいそうな「もわっとした」ところがうまくつながっていったphoto: Eiichi Noguchi, Masanori Ikeda(YUKAI),Takehiro Goto(YUKAI),Kazuhiro Isoda(YUKAI),Yujiro Oozeki text: Tamaki Ibe05 | 302 | forme