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概要

形 forme 302号

した状況を鑑み、アートツール・キャラバンには「自分の感じていることに自信をもってほしい」という子どもたちへの願いが込められています。実践では、子どもたちが自身の感覚を働かせて能動的に遊ぶ姿が見られます。色水が動いていく様子をじっと見つめる子、指先の感覚を働かせてネジをまわし組み合わせて遊ぶ子、注意深くのぞきこんで動きを楽しむ子、「これがいい!」と自分で決めて伝える子。このような子どもたちの姿からは、感覚を働かせるということが行為と一体化している様子がわかります。まさにその基底には能動性が位置付いているのです。子どもがつくりだすそして、こうしたいわば実感の尊重と能動性は、子どもたちが表現することへの勇気へとつながっていきます。「わたしが確かにここにいる」という実感こそが、さらなる能動的な表現行為を連鎖的に生み出していくのです。指先を使って絵の具で線を自由にかいていくプログラムでは、指先のみならず全身の感覚を使って形と色を味わい楽しんでいる様子が見られます。ある子は、絵の具で遊びながら「お散歩してるの」とファシリテータに話してくれました。また透明カラーシートを動かしたり、組み合わせたり、重ねたりするなど、いろいろ試みながら、心地よい感じを探している姿も見られます。このように子どもたちは、行為を伴わせながら形や色をつくり、つくりかえ、つくり続けています。またそこでは、子どものつぶやきからもわかるように、自分のイメージをふくらませている様子も見られます。まさに、形や色という造形要素を使った活動を通して、意味や価値をつくりだしているのです。子どもと子ども、子どもとおとながつくりだすさらに注目すべきは、そうした意味や価値をつくりだしているのは、一人の子どもだけではありません。プログラムに参加している子ども同士の一期一会の関係からもつくりだされています。近くの子の活動に自分の活動を連動させたり調整したり、時には「わぁ、それかわいい!」「私はこっちにするね」など声を掛け合ったりしながら、〈いま―ここ〉での出会いの中からつくりだしているのです。また、プログラムに参加しているファシリテータ、来館した保護者をはじめとしたおとなも一緒に活動しているのですが、そこでは子どもとおとなの協働によって活動が展開されています。子ども同士で声をかけ合いながら活動している場にファシリテータもそっと寄り添います。子どもたちの笑顔、ファシリテータの笑顔が交差しています。また一緒に来た保護者も、ファシリテータとともに子どもの行っていることに関心を寄せています。これは、子どものつくりだしつつある意味や価値に対しておとなが寄り添うことから、さらに新たな価値や意味をつくりだしている様子であると言えるでしょう。つくりだされるものとはアートツール・キャラバンには、もう一つ願いがあります。それは、「アートを子どもたちのすぐ近くに届けたい」という願いです。〝アート?と聞くと、特定の場に赴き、専門的にアプローチしないと触れることができないもの、と思われがちですが、アートツール・キャラバンでは逆の発想から、〝アート?が、子どもたちの居る場所へと出向いていきます。そこで見られる子どもの姿は、これまで紹介してきたように、学校における図画工作・美術の授業で見られる姿と重なっています。ここにおいて、学校の授業で大切にしている「子どもたちが能動的に『つくりだす』姿」とは、学校のみならず、保護者や地域とも共有が可能なものであることがわかります。川崎市市民ミュージアムのプログラムに参加した保護者の感想にも、そのことが次のように示されています。(傍点筆者)子どもが三人いるのですが、それぞれ????がそれぞれの楽しみ方を見付けた???????????????ようで、大変刺激になりよかったと思います。最近の遊びは、テレビゲームなど遊び方があらかじめ指定されていることが多いのですが、ここでは何も言われなくても子どもたちが自分なりに遊んでいる姿を見ることができて新鮮でした。このように、子どもの造形活動を通し345forme | 302 | 08