ブックタイトル形 forme No.303 教科書特集号

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概要

形 forme No.303 教科書特集号

一身近な他者の存在昨年、母が亡くなりました。冷たくなった身体は、もう、すでに動くことはありません。思えば、あまりに身近である存在は、日常の中にとけ込んでいて、自分の意識の中に、対象として浮かび上がることはありません。「孝行をしたい時に親はなし」という言葉があります。死という日常の彼方に去ってしまって、はじめてその存在の確かさに気付くことがあります。その存在は、記憶の中に堆積して、自分の一部をかたちづくっているように思います。世間的に言えば、無名な存在ですが、私にとっては、最も身近な、私の成長にとって、欠かすことのできない存在です。肉親を例にとりましたが、身内以外でも、人の成長には、身近な他者の存在は、欠かすことができないでしょう。二「教師」という存在「教師」という存在もまた、たんに、知識を伝達する者という以上に、同じ時間や空間を過ごし、生きる子どもにとって、もっとも頼りになり、かつ、自分の存在を承認し、世界を開いていく学びの場を保障してくれる大切な存在であると言えます。近年は「教師」としての外面的な機能性が、多々問われ、「教育の成果」や「説明責任」というようなことばかりが、喧伝されています。けれども、「知識を伝達する」「能力を伸長する」という役割を介在させつつも、より深いところで、子どもの存在を支えていくというのは、教師という仕事の、言わば秘匿的な性質をもつ、最も重要な本質が隠れており、表には出にくいものなのですが、子どもの学びや教育の営みの原動力となるものが、そこにあります。三二人称的存在認知心理学者の佐伯胖氏は、教育の場における人のかかわりを「ドーナッツ論」(図1)として提案しています。(注1)「私」という一人称は、「あなた」という二人称とかかわりながら、さらに、三人称な世界とつながっているという、この世界における人の関係性を示したものです。「子ども」は、身近な他者である「あなた」(教師)とかかわる中で、世界を知り、自分を成立させていきます。ここで大切なことは、すでにある客観子どもと一緒に学ぶかけがえのない存在としての"あなた"帝京大学教育学部専任講師辻政博IYOUTHEY???????????????????????????????????????? ???????????????????????????図1「かかわりのドーナッツ」佐伯胖著『幼児教育へのいざない』(東京大学出版会2001)forme | 303 | 14