ブックタイトル形 forme No.303 教科書特集号
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形 forme No.303 教科書特集号
的な世界の知識を、教師が、教材や指導を通して、子どもに注入していくことではありません。そうではなく、子どもは、あなたとのかかわりを通して、世界を広げ、学んでいくという事実や経験が大切なのです。考えてみると、教師の存在は、教育というシステムの上に成立しており、その言葉や態度は、暗黙に「?こうあるべき」という教化的な意味性をまといつつ、子どもに放たれます。案外、こうした性向に、教師自身は無頓着な場合が多いようです。システムのなかに自らがいると、それは空気のように当たり前の存在となってしまい、気付きにくいのかも知れません。けれども、教師が自分の存在を相対化しながら、上からの一方的な視線を脱して、子どもの学びのプロセスにかかわっていくことはたいへん重要です。目の前にいる生身の子どもに寄り添うことからはじめることが大切なのです。寄り添うとは、理解と共感です。子どもの興味や関心、ヒト・モノ・コトとのかかわりを、子どもの視線や気持ちに寄り添い、共に発見し、驚き、喜ぶということのなかにこそ、子どもの学びへの手ごたえが生まれてきます。そして「?こうあるべき」は「願い」へと変質し、子どもに受容されるのです。同時に、教師としての学びそのものも、こうした活動のなかに折り込まれているのです。というのも、こうした学びの場を提供するのは、教師であるからです。四形・色・イメージを媒介にした学び造形表現は、「言葉」とは、異なる「形」や「色」や「イメージ」など表現の「媒介」として、特徴をもつものです。(注2)これは、文字通りの「言葉」が、人間にとって欠かせない媒介であるのと同等に、もう一つの欠かせない「言葉」でもあります。それは、世界を概念の連なりでとらえ、思考していくことと同時に、物事をイメージや情景としてとらえ、考えていく方法です。子どもが成長していく過程で、造形的な表現や活動は、欠かすことのできないものです。そこでは、子どもは、自らの身体や感性を働かせながら、モノとかかわり、他者とかかわり、様々なコトとかかわるなかで、自分自身の意味を紡ぎ出していきます。さらに、それは、他者と意味や価値を共有していく営みでもあります。子どもたちのこうした活動を見ていると、子どもは、実に有能で前向きな存在であることが実感できます。教師の役割は、これまでのように、機械的に表現の内容や方法を子どもに教え込み、それをなぞらせるだけではなく、子どもの能動的な学びが展開するような「資源」をいかに準備、設定できるかということが大切になってくるでしょう。資源とは、子どもの学びにとって、利用可能な環境です。子どもの発する様々な「声」(無言の声も含めて)に聞き入りながら、学びの場を創造していくことが大切ではないでしょうか。注1佐伯胖著『幼児教育へのいざない』(東京大学出版会2001)注2文部科学省『小学校学習指導要領解説図画工作編』(日本文教出版株式会社2008)では〔共通事項〕として提示されている。15 | 303 | forme