ブックタイトル形 forme No.303 教科書特集号

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概要

形 forme No.303 教科書特集号

6上)がありますが、階段の隅っこや靴箱を利用してその場所にふさわしい造形を考えたり、木の枝の陰の輪郭をなぞったりすることは、日常の至る所に造形につながる発想が潜んでいると認識できることにつながります。このような題材発想ができるかどうかは、教師の心がけによります。雨上がりの放課後には、廊下の傘立てに残り傘があったりします。低学年の教師ならば、次の日の朝に「今日の傘立てさん、寂しそうだね」と声がけをするだけで、子どもたちが「傘立てさんに何かプレゼントしよう」とか「傘立てさんのお家を飾ってあげよう」といった提案をしてくれるかもしれません。そうしたちょっとした支援が普段から大切だと思います。このような子どもたちの発想を柔軟にして、感性をゆさぶる支援ツールが図画工作の教科書でもあります。授業の始まりはいつも……【学習のめあてを明確化する】新しい図画工作の教科書では、各題材の始まりに小さな黒板がかけられています。この黒板には評価の観点を反映した学習のめあてがまとめられています。低学年の「いろいろなかたちのかみから」(1・2上)という題材では、「いろいろなかたちのかみにかこう」(関心・意欲・態度)、「かきたいことをかんがえよう」(発想・構想)、「かきかたをくふうしよう」(創造的技能)、「ともだちのくふうをみつけよう」(鑑賞)といった具合です。このような教科書のデザインは、感性や想像力を育む教科の特性を反映しながらも「学習材」としての位置付けを明確にしています。子どもたちはそこに明示されためあてを意識して造形学習をし、授業の最後にはその資質能力を達成しているかどうかを振り返る一連の学びを積み重ねることが大切です。思いのままに【主題生成を支援する】大正時代に「随意選題」という言葉がありました。国語の綴り方教育の中で生まれたもので、子どもが生活から見い出したものをもとに自分の言葉で書き綴るというものです。絵画教育において生活経験の中から自分なりの見方で気付いたこと思い付いたことを自由にテーマを決めてかくという生活画の原点となりました。この主体的な造形態度の形成につながる考えは、図画工作科の学習指導要領にある「自分の思い」「思いのままに」「表したい思い」「その子らしい主題」といった形で息づいており、それが中学校美術科の学習指導要領にある「主題を生み出すこと」にもつながっています。行為を通して偶然生まれた色や形をもとに発想するものであれ、材料との関わりからひらめく工夫であれ、物語から想像したイメージを色や形に表すものであれ、自分なりの思いや主題を形成できるように支援することが大切です。教師に求められるのは、教師のイメージに近付けるような指導をするのではなく、教科書題材をヒントに子どもの思いに寄り添う学習のファシリテーターとなることです。見ることを楽しむ【鑑賞事始め】鑑賞っていうと、どうも苦手でという答えが返ってきます。知識がないからとか、どんな作品を選べばいいのかわからないからと言うのです。でも子どもたちの筆箱の中の鉛筆やものさしの中から気に入った理由を話し合うことから鑑賞を出発することも可能です。話し合ううちに形や色の面白さだけでなく、「入学の時におばあちゃんからもらったので大切にしているよ」といった人とモノとの関わりにつながることもあります。美術作品や伝統文化の有名作品だけが鑑賞対象ではありません。ともかく見ることを楽しむことから始めたいものです。おわりに図画工作における学びとは、楽しさを軸に他教科では養うことのできない感性や想像する力を羽ばたかせるものと考えます。それをさりげなく支える学習メディアが図画工作の教科書なのです。19 | 303 | forme