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概要

形 forme 304号

木版画で表す楽しみシュッシュッ、サクサク。彫刻刀の先から聞こえる音、版木の香りや手触りを感じながら体全体で彫り進む心地よさ、ローラーでインクをのせる気分、刷り紙をそっとめくって出来映えを確かめるわくわく感。木版画の活動は子どもの心をつかむ楽しみで溢れています。そうした楽しみを十分味わってもらうための場の設定について少し見ていきましょう。「安心して夢中になれる」がポイント彫刻刀やインクなど、木版画で表す活動には子どもが興味を示す、しかし、扱い方には配慮したい用具や材料が登場します。また、立ったり移動したりする作業も求められます。安全を確保しつつ楽しさを味わえるように、子どもも指導者も安心して夢中になれる場を設定したいものです。そこで、例えば次のような点をヒントにしてはいかがでしょう。1用具・材料・仲間を大切にする場が高める協働の気分彫刻刀やバレンなど、活動を支えてくれる用具や材料の居場所をつくったり、刷りの場面でインクが手に触れる子と触れない子でパートナーを組み、協力する場を設けたりすることで互いを大切にしながら協働する気分が高まります。2ゆとりある場が導くスムーズな動き版木を彫る子どもの背後に空間を設けたり、彫っている版木の周りを広くとったりすることで、安全な移動や版木を回して彫るといった動きが導かれます。3場の役割が促す主体的な活動インクをのせる場と刷り上げる場を分ける。机の上の用具も使い方が伝わるように配置する。作業毎に役割をはっきりさせた場を動線に留意しながら設けることで、作業の流れに対する子どもの理解が促され、進んで活動する意欲が高まります。教室の広さや子どもの人数によって複数設定してもよいでしょう。4視線が交差する場で生まれる見やすい視野と思いの重なり彫るときに互いの手元が見えるように座ったり、刷り上がった作品を見合える場を設けたりすることで作業の様子が見えやすくなるとともに、子ども達や指導者の眼差し、思いの重なりが生まれます。学びの気分を支える場の設定場の設定は物理的な使い勝手だけでなく学びの気分にも大きく関わります。それぞれの実態に合わせながら、子どもも指導者も夢中になって活動できる場づくりを楽しんでいきたいものです。木版画編文名達英詔北海道教育大学旭川校教授イラスト後藤恵forme | 304 | 12