ブックタイトル形 forme 304号
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形 forme 304号
はじめにローウェンフェルドやジョンストンらが、表現における「思春期の危機」*について警鐘を鳴らしてから半世紀以上になるものの、はたして今日、その状況が克服されているかは疑問が残るところです。両者に共通しているのは、その克服の手段として、再現描写への過度のこだわりからの解放を目指している点にあります。本題材は、幼児の頃のスクリブル(なぐりがき)に見られる原初的な欲求を大切にし、思うままにらくがきをさせつつ、簡単な形をもとに変化・発展させながら独自のフォルムへと発展させていくことを目指しています。思春期に起こりがちな描写表現への自信の喪失を避けるために、スクリブルを導入することはジョンストンも推奨しているところです。生み出される形や色が、表現への喜びや自信につながり、それらすべてが自分自身の無意識の中から立ち現れてくる、「創造の原点」ともいえる原初的な表現活動といえるでしょう。手立てと子どもの学び「今日はらくがきをしてもらいます。ただし条件があります。『見たことのない形』を生み出しましょう」。「エーッ」の反応とともに、どんどんらくがきし始める生徒もいれば、いきなり描けない生徒には、はじめは簡単な○や△のような形からスタートさせ、それを少しずつ変化・発展させていくよう促します。途中過程をすべて残しておくことが大切です。生徒が生み出す様々な形を、教師はおもしろがりながら言葉がけをしていくと、彼らは手の動きがどんどんダイナミックに変化し夢中になっていきます。さらにいくつかを合体させたり、好きなところを選んで再構成させたりして形を練り上げさせていきます。その中から、主役や脇役、場合によっては背景になりえるものを選ばせ、全体の構成を考えさせます。そこからは、生徒の興味関心や発達段階等に応じて、抽象画や文様デザイン、平面構成や切り絵等、様々な題材へと展開させていきます。例えば「切り絵」の場合は、描いた線を切り抜き、裏から別の紙を貼ります。絵の具等での描写に自信が持てない生徒でも、らくがき的な線がステンドグラスの枠のようなしっかりと力強い輪郭に置き換わり、表現の喜びや自信へとつながる効果が期待できます。裏から貼るのが色画用紙だけでは色数が限られるため、画材は自由に、マーブリング、フロッタージュ、コラージュ等の技法や、彩色・文様等の描き込みの工夫もさせると、さらに表現の幅が広がっていきます。鑑賞活動では、形や色で表現された作品の印象を、味覚・聴覚等の五感を通したオノマトペに置き換えていき、それらをもとに独自の世界観「らくがき」からの発展表現における思春期の危機を乗り越えるために東京学芸大学附属竹早中学校山田猛授業実践学びのフロンティア中学校2・3年生向き*思春期に目覚めた批判的意識によって、自分の子どもっぽい表現にショックを受け、表現活動の危機が訪れるとされる説。forme | 304 | 18