ブックタイトル形 forme 306号
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形 forme 306号
中学校三年間の学びに寄り添う教科書岡山大学大橋功×IPU・環太平洋大学村上尚徳中学校の三年間は、子どもが大きな成長をとげる大切な時間です。新しい教科書も、その大きな変化に合わせて、美術にできることを提案したいと考えました。そのコンセプトと特徴について、著者のお二人にお話をうかがいました。大橋私は「学びのステージ」というコンセプトで、平成二十四年から使われている中学校美術の教科書の編集にかかわりました。新しい教科書では、村上先生にも加わっていただいて、子どもの成長をイメージした時、一方向のベクトルではないというところからコンセプトを深めました。村上美術の授業では、例えば自己を見つめる自画像を描いたり、生活の場面で気になる風景を描いたり、ポスターで社会に何かを訴えたりします。子どもを取り巻く環境を考えると、自己があり、生活、社会とのかかわりがある。それを教科書でも幅広く押さえる必要があると考えました。大橋自己についても、中学生になると、他者とのつながりで自分を見るようになります。さらに、一年生には一年生の自己の見つめ方があるし、三年生には三年生の見つめ方がある。認識力が違いますからね。この発達と美術の学びがどう関係しているのかと考えた時に、表現や鑑賞を通して自分の内面世界が広がっていくんですね。自己から他者へ、さらに社会へ、といったように。しかし、これは常に自己との往還の中で広がっていきます。村上自己を見つめることで自己が深まるのは当然ですが、身近な人を描く時に、なぜその人を選んだのか、自分にとってその人はどんな人なのかを考えることも自己を見つめることにつながります。大橋一年生の題材「身近な人を見つめて」ですね。これは他者。けれど同時に「身近な人を表すことは、その人をより深く理解するとともに、その人に対する自分自身の気持ちに向き合うことにつながります」と書いてある。他者を見つめつつ、自己に返ってくるということを伝えたかったのです。村上あるいは、ポスターで何かを訴えようという時に、何を訴えるか、なぜ自分がそれに関心をもつのか考えます。社会的なものを題材にしますが、それを考えることで、自分にはこういう価値観があったんだ、こういう思いがあったんだと改めて気づく。このように社会を見つめることは自己を深めていくことになると考えます。大橋最初にも言いましたが、自己から社会への意識の広がりはもちろんありますが、それは一方向での発達段階ではない。内面世界が自己に向いたり、外に向いたりする、方向づけですね。なので教科書も、三冊でさまざまなテーマの題材を設けています。村上学習指導要領で考えると、A表現(1)は自分の感じたことを表す、つまり自己。そこには他者や風景を見て感じたことも含まれます。(2)になると、目的や機能。自分が使うものをつくることもありますが、他者が使うものや他者に伝えたいこと、社会に発信したいこともあります。このように美術の領域自体が自己から社会までを扱っています。著者対談forme | 306 | 12