ブックタイトル形 forme 306号
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形 forme 306号
に和紙を用いたページがあることは大変意義深いと近藤さん。「特に、浮世絵が原寸大で掲載されているのがいいですね。和紙はユネスコの無形文化遺産に登録が決まったばかりですし、今とても注目度が高い。子どもたちも、こうして教科書という媒体で気軽に本物の和紙に触れられ、また和紙に印刷された原寸大の浮世絵を見られるということは、自らの感覚を磨くことにつながると思います」。一色ずつ摺り重ねていく浮世絵の制作工程が、写真で丁寧に紹介されているのもいいですねと笑顔を見せる近藤さんは、つい最近海外の美術館で同様の展示を見たことがあるそうだ。和紙の手触りを楽しむように教科書のページをめくる近藤さんが、伝統工芸が紹介されているページで手を止める。「漆、友禅、そしてもちろん和紙もそうですが、日本には本当にすぐれた伝統工芸がたくさんあります。そうした素晴らしいものを、子どもたちにたくさん紹介してあげてほしいですね。こうしてすぐれた伝統工芸を多数扱っている教科書を見ても、すぐにそのすごさはわからないかもしれない。でも、いつか大人になって本物に触れたとき、これは教科書で見た「あれ」だ、と思い出すことでしょう。そうやって伝統文化に対するハードルを下げ、本物に親しむための下地をつくってあげることが大切なのです」最後に、近藤さんのお宅ではどのように芸術に触れる機会を設けていたのか問うと、近藤さんは懐かしむようにこう語ってくれた。「とても些細なことかもしれませんが、我が家では年中行事を大切にしています。お正月、節分、ひな祭り、七夕……。日本の文化や季節、多様な伝統工芸を通じて、日本人としての心を養ってほしいと願い続けてきました。先ほどの浮世絵もそうですが、今回拝見した新しい教科書には、日本の伝統文化がさまざまに工夫された形で表現されていました。授業を通じ、子どもたちは身構えずにそれに触れることができ、自国を知る日本人としてしっかりとした輪郭がつくられれば、その上に刷り重ねられる学びもさらに彩り豊かなものとなっていくでしょう」近藤誠一こんどう・せいいち第二十代文化庁長官。一九四六年神奈川県生まれ。外務省に入省後、ユネスコ日本政府代表部特命全権大使、駐デンマーク特命全権大使を歴任。文化庁長官としては、富士山とともに三保松原を世界文化遺産登録に導いた。現在、東京大学大学院特任教授、東京芸術大学客員教授など兼任。著書に『FUJISAN世界遺産への道』など。「美術2・3下」P.35掲載の和紙を使った生徒作品。伝統はさまざまに形を変えながら受け継がれていく新しい美術教科書の、原寸大の浮世絵が和紙に印刷してあるページを見る近藤さん17 | 306 | forme