ブックタイトル形 forme 306号
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形 forme 306号
風快晴》では、山腹の赤と裾野の緑とが重なる部分や山頂の茶褐色の部分など、山全体にぼかしを生かし、赤富士の雄大な姿を表している。絵の具にも注目しよう。青い部分には、当時、ヨーロッパから日本に入ってきた顔料のプルシアンブルーが使われている。ベルリンで製造されたので「ベロ藍」とも呼ばれる絵の具だ。ヨーロッパ由来だが、その発色は浮世絵独特になる。というのも、油で溶いた絵の具をキャンヴァスに塗る油彩に対して、浮世絵は水で溶き、摺師が和紙の繊維の中に馬連で摺り込むことで、鮮やかな色や木版画独特の風合いを出しているのだ。例えば、青にこだわったゴッホの絵などと比べてみても面白いだろう。北斎をはじめとする浮世絵は、江戸の庶民だけでなく、西洋の人々をも魅了した。西洋産の絵の具を取り入れ、新たな表現を得た日本の美術が、西洋で新鮮に受け入れられ、ジャポニスムという新しい運動が起きたのは、文化が東へ西へと行き来する中で、人々がそのエッセンスを積極的に学んだからこその結果だろう。伝統木版技術のような、伝統文化などを継承するということの意味も同じだろう。子どもたちには、目の前にある文化が、さまざまな人が世界や歴史から学び築いてきたこそのものであるということを、感じとってもらいたい。アダチ版画研究所浮世絵に培われた伝統木版技術を高度に継承した職人をかかえ、木版画の制作出版をおこなっている工房兼版元。浮世絵版画の復刻をはじめ、源氏物語絵巻に代表される大和絵、墨絵の再現、日本画巨匠の木版画作品、現代アーティストの作品等数多くの木版画作品を発表し続けている。アルルの跳ね橋(ラングロワ橋)(部分)[油彩・キャンヴァス/54×65cm]1888フィンセント・ファン・ゴッホ[1853 ? 90]クレラー=ミュラー美術館蔵「美術1」P.4掲載19 | 306 | forme