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概要

形 forme 306号

美術の教科書の役割明治学院大学教授新井哲夫中学校における美術教科書の役割教科書とは、教科書の発行に関する臨時措置法(第二条)によれば「教育課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書であって、文部科学大臣の検定を経たもの」を意味します。「教科の主たる教材」、「生徒用図書」としての美術の教科書には、特に重要なものとして、以下の三つの役割があると思います。1学習指導要領の具体化学習指導要領の美術の目標や内容は包括的・大綱的に示されています。そのため、実際の教授に際しては、それを具体化し、「教育課程の構成に応じて組織排列」した教材が必要になります。そのような教材が「教科の主たる教材」としての美術の教科書です。したがって、美術の教科書の最も重要な役割は、学習指導要領の教科の内容を適切かつ魅力的な形で具体化し、充実した学習が展開できるようにすることです。2授業のガイド、学習のサポート美術の授業では、他教科のように教科書を中心に授業が進められることはあまりありません。特に表現活動では、導入時に活動への動機づけや方向づけとして教科書が用いられても、活動中に一斉に活用される場面はあまりありません。「教科の主たる教材」としては、はなはだ心許ない気もしますが、美術の教科書の役割はそもそも他教科の教科書とは根本的に異なっています。それはテキストブックというよりも、ガイドブックに近い役割を担っていると思うのです。例えば、鑑賞活動において教科書の図版や解説文が重要な役割を担うことは当然ですが、表現活動においても生徒はしばしば発想や構想のアイデア・ソースとして教科書を利用します。また教師も、授業の計画を立てる際、教科書の題材を重要な手がかりとして利用しています。つまり教科書は、生徒にとっても教師にとっても、美術の学習をガイドしたり、サポートしたりする役割を果たしていると言えるでしょう。3最も身近な情報源教科書は、生徒にとって美術やデザインの魅力に触れることのできる身近な作品集であり、資料集です。教科書の図版を見るだけで、美術やデザインの魅力や広がりを感じることができます。子どもの頃使った教科書を、大人になっても大切に保存している人は少なくありません(私もその一人です)。授業の枠を越えて、日常生活の中で教科書を通して美術やデザインの魅力に触れられることは、少なからず美術の学習を支える環境づくりにもなっているのではないでしょうか。新しい教科書の特色新しい教科書には、美術教科書に課せられた役割をこれまで以上に果たし、中学校三年間を通して充実した美術の学習が可能になるように、さまざまな工夫がなされています。内容構成上の工夫についてみると、新ガイドとサポート身近な人に贈るメッセージカード,学校祭のポスター,パッケージデザインと,デザインの目的や条件が広がっていくforme | 306 | 20