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概要

形 forme 306号

しい教科書には以下のような特色が見られます。1三年間の学習の積み上げと発展・深化を重視した題材構成各領域・分野ともに、三年間を通じて、美術の学習が自己→生活→社会、自然、環境へと広がり、そして積み上がるように題材が構成されています。例えば、「デザインや工芸などに表現する活動」では、文字やカードのデザイン(一年)、サインやピクトグラム、ポスターやブックカバーのデザイン(二・三年上)、パッケージや環境のデザイン(二・三年下)というように、目的や条件を自己→生活→社会、自然、環境へと広げながら、デザインの意味や役割について体系的に学び、理解を深められるように構成されています。このような三年間を見通した学習の積み上げと発展・深化のプロセスを具体的な形で、明確に示すには、三分冊による内容構成が適切であり、不可欠です。2題材相互の関連性の重視と巻末資料の充実新しい教科書では、三年間の学習を効果的に積み上げられるように、学年や領域・分野を超えた、題材間の関連性が重視されています。また、授業のガイド、学習のサポートとしての役割を強化するために、巻末に色彩や技法、鑑賞資料などをまとめた資料ページが設けられています。3図画工作との連続性や美術を学ぶ意味の重視各分冊のオリエンテーションを充実させ、一年では図画工作の学習との連続性を重視しています。また、三年間の表現や鑑賞の学習を通して、美術やデザインの意義や役割について生徒一人ひとりが自らの考えを深められるように配慮されています。4道徳との関連性の強化道徳的な心情、判断力、実践意欲と態度などの道徳性は、学校の教育活動全体を通じて養うことが求められています。表現を通して自己を見つめ、他者を思いやること、鑑賞を通して個性豊かな表現にふれ、美しいものに感動することは、道徳教育につながる美術の学習の重要な要素です。新しい教科書では、道徳教育と関連する題材には、ページ左下に緑色の文字で、意識させたい道徳の内容を記しています。5美術の持つ社会的な役割や機能の重視二〇一一年の大地震は、東北地方を中心に地域社会や人々に甚大な被害を与えました。「情報をわかりやすく伝えよう」(二・三年上)や「デザインで変える現在と未来」(二・三年下)では、防災や災害からの復興支援、地域に根ざした課題改善などに貢献するデザインの事例を取り上げ、美術のもつ社会的な役割や機能について学習し、美術のもつ力に対する認識を深める機会が設けられています。以上は内容構成上の主な特色ですが、その他にも、これらの特色を最大限に生かすために、製本上の工夫が図られています。6判型の見直しによる視覚効果の向上美術の教科書の重要な魅力は、図版の美しさにあるでしょう。美しい図版を通してこそ、美術作品へのあこがれや表現活動への意欲も高まります。新しい教科書では、従来よりも横に大きい判型を採用し、一部に折り込みなども採り入れながら、図版がより美しく効果的に掲載されています。また「東へ、西へ…」(二・三年上)では、本物の浮世絵版画の雰囲気を感じ取れるように、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」の《神奈川沖浪裏》《凱風快晴》の二点の図版が、和紙に原寸大で印刷して掲載されています。教科書からのメッセージ中学校の三年間は、義務教育課程において美術を必修教科として生徒全員が学ぶ最後の機会です。その貴重な三年間の美術の授業をガイドし、学習をサポートするのが美術の教科書です。中学校に進学してきたばかりの一年生にとって、図画工作から美術への教科名の変化は、美術に対して日常生活からかけ離れた「むずかしそうな教科」という印象を抱かせるかもしれません。一年の「出会って広げよう」や「図画工作、そして…美術へ」は、そうした生徒たちに対して、「心配はいらないよ。図画工作の経験を生かして、楽しく学習しよう」という招待状です。また、二・三年下の「あなたへ~中学校美術からの巣立ち~」は、三年間の美術の学習を終えて、新しい世界へ旅立とうとしている三年生に贈る祝福のメッセージです。新しい教科書に込められた著者や編集者の願いが、美術を指導する先生方や生徒たち一人ひとりの心に届くことを願ってやみません。浮世絵を原寸大で掲載した2・3上の巻末資料には、浮世絵版画の制作工程を掲載。彫りや摺りの工夫を知ることで、学びが深まる21 | 306 | forme