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概要

形 forme 306号

十五歳の時の彼らが、今の彼らを励ましてくれる自分で撮影した写真に詩を組み合わせる題材に取り組んだ時のことです。あまり美術に(というより勉強全般に)身が入らなかったAさんが「大人になった私は、結婚していて子どもが二人、ずっと一緒にいるのがいいんだよね……。そんなのできるかわかんないけどさ」と話してくれました。そして、四本の木が並ぶところを撮りたいと。両端の大きな木がAさんと旦那さん、間の小さな二本の木は二人の子ども。校庭や公園を探しましたが、ぴったりくる木が発見できません。大切な未来の夢を形にしたいと焦っていたある日、「先生、いいこと考えた!色鉛筆を立てて撮るよ。青が旦那さん、ピンクが私、オレンジと緑が私の子ども!」と。校舎脇の草むらに色鉛筆を立てて撮った写真はなぜか懐かしい色合いで、絵本の一ページのようでした。まとめの相互鑑賞会では「やらなくてもいいのよ」と声をかけましたが、堂々と発表し、作品に込めた思いを解説する場面では涙ぐむクラスメイトもいました。美術の授業は「深く見つめる」「発見し、新しいことに気がつく」「感動や驚き」「挑戦し、乗り越える」という、人の成長に大切な活動の連続です。それをAさんもやり遂げたのだと感じました。先日、Aさんとその仲間から成人式後の同窓会のお誘いをいただきました。こんな日が来ようかと、学年全員分の写真作品とワークシートを保管しておきました。ビックリするだろうなあ、恥ずかしいだろうなあ。未来へのまっすぐな夢が表現された美しい作品。十五歳の時の彼らが、今の彼らを励ましてくれるとワクワクしています。ふだん口にはできないことも、手紙だとすなおに書けることがあります。美術も似たところがあるように思います。言葉と絵を重ね合わせると……。2・3上の題材「響き合う言葉と絵」forme | 306 | 08