ブックタイトル形 forme 306号
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形 forme 306号
「技」「モノ」「こと」中学三年生の授業中、最後の自由制作について生徒が相談に来ます。アイデアスケッチを私に見せながら「画面の中央には三年間使った野球のグローブをスケッチして、背景部分にはこんな技法を使います」と語ってくれます。そういう時、「なぜそれを描きたいと思ったの?」「それを描くことで、その技法を使うことで何を表したいと思ったの?」などと尋ねることもしばしばです。私は「技」「モノ」「こと」の三つを常に意識して作品制作の授業や美術部の指導をしています。上記の生徒は、使いたい「技」と描きたい「モノ」までは考えてくれたようですが、本当にやりたい「こと」や、表したい「こと」にまでは届いていなかったようです。次の週、この生徒が「三年間でボロボロになったグローブに、自分が感謝している『こと』を表したいです。それが感じられるような背景や技法に変更します」と言ってくれた時は大変うれしく感じました。しかしすべての生徒がこのように「本当に表したい『こと』」をスムーズに見つけられるものでしょうか。なかなか指導の難しさを感じます。さまざまな教材や表現方法が開発される中、「何をつくったか」「何が生徒の興味を引くか」という話題が尽きません。しかし、生徒が「どう思ってつくるのか」「何を願ってつくるのか」という主題生成や構想の指導は、まだまだ奧が深いようです。「本当に表したい『こと』」を見つけたり、生み出したりできた生徒は、それを実現するにはどうすればよいかを主体的に試行錯誤します。つまり「こと」の指導は難しくとも、美術教師の避けて通れない道なのではないでしょうか。特集中学校三年間の美術で伝えたいこと2・3下掲載の生徒作品。構想が見える制作途中のスケッチ、作品で表したい「こと」を感じられる作者の言葉も多く掲載しました。09 | 306 | forme