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概要

形 forme 307号

れ以上に見る視点や考える視点が深まります。そして、物事の表面だけでなく内面的なものも大切にするような心の成長も見られます。高校受験を控えてさまざまな葛藤があり、自分の将来や生き方などにも関心を深める時期です。中学三年生にならないと身に付きにくい力や、理解しにくい価値観などがあるんですね。それは大人になっていく上で、とても大切なものなんです。「笑顔の自画像」の裏に小泉「中学三年生ならではの表現がある」ということを実感された例ということで、長尾先生に中学三年生の自画像作品をお持ちいただきました。村上この作品群は、どのようなねらいを持って制作されたものなんでしょうか。長尾これは「手紙?十年後の自分へ」という題材名です。十年後の大人になった自分が見たときに「頑張ろう!」と思えるような今の自分を発見して描きましょうと投げかけました。人間は多面的な存在です。過去の自分が未来の自分を励ます、そんな一面を自分の中に発見してほしくて取り組みました。実は他の先生の実践の題材名を真似したことがあるのですが、その時は子どもが全然のってこなくて。教師が魂から発した言葉なのかどうか見抜いているんですね。すぐ「手紙」に戻しました。奥村静かだけれど強い目が描かれていますね。抑えきれない熱情のようなものが画面から伝わってきます。またこの笑顔もすばらしいですね!十年後の自分は、この花のような笑顔を見ることで頑張れるはずだと、今現在の彼女は感じているということですね。長尾この生徒は少し暗い色彩を使うことが多かったんです。小泉この自画像を見る限り、そうとは思えないですね。長尾彼女は美術部員でして「私は部活ではマンガを描きたいんです」と。私が「他にもいろいろやってみない?マンガの表現も深まるよ?」と提案してもなかなか乗り気になってもらえなかった。小泉何が彼女を変えたのですか?長尾三年生が部活を引退した秋、話がしたいと言われて……。「自己開示」を促すために長尾「先生は私たちのことなんか、どうでもいいんだと思ってた……」と泣かれてしまって。マンガの活動も認めてもっと応援してほしかったし、デッサンや工芸、共同制作にも挑戦してみたかったけど、言い出せなかったんです。私はこの子の本心に気付けなかったんです。たくさん話をして、真っ赤な目で「スッキリした!先生と話せてよかった。これで受験も頑張れる」と言ってくれたとき、今までこの子の心の動きに寄り添えなかった不甲斐なさと、分かり合えたうれしさとで、私も泣いてしまいました。奥村そんな壁を乗り越えたからこそ、この笑顔なんですね。長尾はい。あ、それだけではないと思いますが(笑)描き方や色彩もガラッと変わって。筆だけでなく、指も使ってさforme | 307 | 10