ブックタイトル形 forme 307号
- ページ
- 15/28
このページは 形 forme 307号 の電子ブックに掲載されている15ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 形 forme 307号 の電子ブックに掲載されている15ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
形 forme 307号
三角を探してみよう。たくさんあるよ、ここにも、そう、そこにも!ほとんど冷たい色で描かれた絵でもにぎやかに見えるのは、形がリズムをつくってるからなんだ。あ、左端の紫と右の女の人の帽子は同じ色だ!こうやって絵のバランスをとってるんじゃないかな。――私たちが最も陥りやすい、もったいない見方。それは、作品を内容(物語)だけで判断する見方です。その観点だと、静物画や抽象画にはアクセスできなくなる。映画でも小説でも、感銘を与えるのはストーリーだけではないでしょう。言葉づかい、場面の切りとり方、つなぎ方。何より表面に見えている要素を、丁寧に拾うことです。それはすなわち、制作過程に迫ることでもあるわけです。その上でもちろん、作者の状況や別の作品など、情報が増えるごとにひとつの作品が教えてくれることは膨らみます。ちなみに作者の清水登之は、芸術の都といえばパリだった時代、労働者としてアメリカに住み、制作した画家です。これは彼がレストランを外から描いた理由と関係するのかもしれません。ではもうひとつ、野口謙蔵の作品はどうでしょう。季節は?時間帯は?画家はどこから見ているのか?色と形の呼応関係は?視点は無数にあります。物語の解釈に急ぐ前に、観察から始めてみる。そして作品から目を逸らさずに、連想と想像を働かせる。そうすれば、ぐっと絵が「見えて」くるはずです。成相肇なりあい・はじめ東京ステーションギャラリー学芸員。一九七九年生まれ。府中市美術館学芸員を経て、二〇一二年から現職。主な企画展に「石子順造的世界」、「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン」など。梅干[油彩・キャンヴァス/160.5×129cm]1929野口謙蔵[1901 ? 44]滋賀県立近代美術館蔵15 | 307 | forme