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概要

形 forme 308号

「らしさ」を求めて特徴をクローズアップ和菓子のデザインを考えるとき、決まった手順はないのですが、私の場合、モチーフをスケッチすることから始めます。例えば羊がモチーフであれば、まずは写実的に羊を描いてみる。図鑑やインターネットなども使いますが、やはり実物を目にするのがいちばんです。色や質感など外見的な特徴がつかみやすくなるだけでなく、息づかい、動き、周囲の環境など、そのモチーフから広がる情景に奥行きが出てくるからです。描きながら、より羊らしさを表現するにはどこにフォーカスすればいいのかを考えます。毛のふわふわした質感、ぐるっと曲がった角、あるいは視点を引いて、草原の中にいる群れ……。モチーフそのままではなく、特徴を数センチ四方の小さな立体にギュッと凝縮することによって、見た人に「想像する楽しみ」が生まれる点が、和菓子の面白いところですね。素材や技法も考慮しながら、モチーフの特徴をとらえ、シンプルな表現にしたものが最終的なデザインになります。その後は、試作を通して頭の中のイメージと実物を一致させる作業。例えば茶室で召し上がることがあらかじめわかっているような場合は、ほの暗い空間でも映えるように明るめの配色にするなど、微調整もここで行います。オートクチュールのお菓子はあくまでお客様が主体であるため、菓銘(お菓子の名前)をつけませんが、後ほどお客様から「こんな菓銘をつけたよ」小さな世界に四季を織り込み、見る人、食べる人を楽しませる和菓子の世界観を、作り手はどのように表現しているのでしょうか。お客様の要望に合わせて、オリジナルの和菓子をデザインし、製造する「オートクチュール」の経験がある職人に、和菓子を形にするための工夫を聞きました。表現和菓子デザインの発想奥:デザインの発想の種となるノート。スケッチや調べた季語などがつまっている手前:具体的なデザインを構想するためのアイデアスケッチ