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概要

形 forme 308号

和菓子研究のきっかけ―中山さんが和菓子と出会ったきっかけについて教えてください。中山最初に和菓子の意匠の面白さを感じたのは高校生の時です。友達に誘われて参加した学校のお茶会で紫陽花の形の和菓子が出たのですが、あん玉のまわりに賽の目切りの紫色の寒天がちりばめられていて、卵白を泡立てたものがかかっていました。「お菓子で紫陽花を表現できるなんて、すてきだな……」と思いました。大学では美術史を専攻していましたが、研究者になるつもりはありませんでした。ですから卒業論文を書くときも就職を考えて生活に関連することがいいかなと思っていました。父親が食品関連の仕事をしていたので、日本料理の盛り付けの美しさなどもテーマとして面白いかもと思って調べていました。そんな折、本屋さんでとらやの江戸時代の菓子絵図帳が載っている京菓子の本を見つけたのです。絵図帳は今でいう商品カタログのようなもので、桜や山吹の花、霜柱などをイメージしたお菓子の絵図が載っているのを見て「こんなデザインが江戸時代からあったんだ」と驚きました。―学生時代は、具体的にどのようなことを研究されたのでしょうか。中山季節の風物を表したお菓子が広まるのは元禄時代、つまり活気ある町人文化が京都や大阪を中心に花開いた時代です。最初に私が試みたのは、江戸時代の絵図帳に描かれたお菓子の銘と意匠の分類でした。和菓子につけられた銘(菓銘)を五十音別にし、どのような傾向があるのか、またその意匠の特徴などを調べ、「和菓子の意匠」和菓子のデザインは季節や自然物を思い起こさせます。その工夫はどのように表れているのでしょうか。また、そこから見えてくる日本の美意識とは何でしょうか。長年、和菓子の歴史と意匠を研究してきた中山圭子さんにお話をうかがいました。鑑賞和菓子の魅力を味わうforme | 308 | 08