ブックタイトル形 forme 309号
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形 forme 309号
この湾曲は、ピカソが全身を使って描いて、なおかつ、絵を受け止める場所が平たくなかったからできたんだ。絵は平たいものだと思っている人が多いけど、あれは実は、描く紙の方が平たいだけだったんだね。絵を空中に放したら、こんなふうにのびのびする。絵の放し飼いだ。そしてこの湾曲は、ピカソの腕が届く範囲とピカソの体の大きさを写し取ってる。いってみれば、この光の絵は絵であると同時に、ピカソの抜けがらでもあるんだ。描いてあるものや、道具や材料のことを考えるのもいいけど、「抜けがら」のもとになった形や動きを想像しながら見ると、作品はスポーツのようにも見えてくる。たとえばこんな絵はどうだろう。高さ一五〇センチくらいの大きな屏風。ワシャワシャッと八方に飛び跳ねる虎の毛は、どんなふうに手を動かして描いたのかな。それにこの竹!グリグリッとひねりをきかせてウネる太い線の気持ちよさ!頭の中に作者をよみがえらせて、作品の上で起こった出来事を再生してみれば、きっとワクワクしてくる。解説をつけてもいいかもしれないね。「ふりかぶって第一筆、速い!ここで大きく右に展開……」。絵を見て「手に汗握る」ことが、みなさんにはできるかな?ときには、よく見れば、作者の背の高さや、右利きか左利きかがわかることだってあるんだよ。さあ、応援しながら絵を見てみようよ。観戦に行こう、美術館に。成相肇なりあい・はじめ東京ステーションギャラリー学芸員。一九七九年生まれ。府中市美術館学芸員を経て、二〇一二年から現職。主な企画展に「石子順造的世界」、「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン」など。竹虎図屏風[紙本着色・六曲一双・左隻/153.4×358.7cm]1782頃片山楊谷[1760 ? 1801]15 | 309 | forme