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概要

形 forme 309号

はじめに「風神雷神図」などを鑑賞する際、ICTを活用することによって画像の提示がずいぶん便利になりました。一方、実際に実物を見なければ伝わってこない日本画独特のあのマチエールや筆の勢いなど、本当に大切なものを見失った中での表面的な鑑賞になっている感が否めませんでした。そこで、日本画がどのように描かれているのか、その効果などを感じ取りながら表現活動で実感が伴った理解へと深め、表現と鑑賞をより近づけたいという思いでこの題材を実践しました。学びのプロセス1「日本画」って何だろう生徒に尾形光琳の「燕子花図屏風」を提示して、「この絵は、どのようなものにどのような絵の具で描かれていると思う?」と発問してみました。一人の生徒が「和紙に墨だろう」とつぶやくと、「水彩絵の具かポスターカラーかな?」と続きます。ここで、岩絵の具の原石と鳥の子紙、魚、シカ、ウサギなどの様々なニカワを見せます。実際に手で触れたり、匂いを嗅いだりする生徒もいて、「まさかこれで……」と、多くの生徒が作品と材料の用い方を結び付けようとしています。この導入で、日本画への興味や関心もぐっと高まっていました。2植物のスケッチ、下絵の制作、パネルづくり、ドーサ引き(ドーサ水を塗ること)校舎周辺を散策し、自分が日本画の作品として表したい植物を観察してスケッチします。初夏の風が吹く中、野草が小さな花をつけています。日陰で風に揺れる草花がまるで踊っているように見えた生徒は、後に作品の題名を「夜の舞踏会」としていました。美術室に戻り、大きさや種類、組合せを変えた下絵を構成して主題を意識した構想を練ります。おおよそ構想が定まったところで、ベニヤ板に和紙(鳥の子紙)を水張りします。その後、和紙に水がしみこみ過ぎないよう、ニカワ水に少量のみょうばんを混ぜたドーサ水を刷毛で塗っておきます。3地色の彩色、転写、骨描きまず、水干絵の具をニカワ水と混ぜて溶く方法について理解し、地色となる色を主題との関わりから構想して選び、刷毛で彩色しました。次に乳棒で磨り潰した水干絵の具の粒を絵皿の中に入れ、指先で溶いていきます。和の色名に興味津々となる生徒もいて、溶き出された絵の具の鮮やかさに、歓声があがります。下地となる色が乾くと、念紙を用いて下絵をパネルに転写し、耐水性の墨で骨描きしていきます。抑揚をつけながら描かれていく墨の線に、「このまま完成でもいいね」という感想がありました。4彩色配色の構想を練る授業の導入で、速水御舟と福田平八郎の作品を比較鑑賞します。そこで、自分が塗ろ日本画の世界を味わおう表現することで感じ取る日本の美術文化北海道教育大学附属札幌中学校寺田実授業実践学びのフロンティア中学校2・3年生向きforme | 309 | 18