ブックタイトル形 forme 309号
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形 forme 309号
その一商店街そぞろみ部とは、そぞろ歩きながら身のまわりのあれやこれやを観察し、暮らしの中で出合ういろいろな場面を造形的にとらえ直す部活動である。第一回目のターゲットは商店街。郊外型の大型ショッピングモールがつくられる一方で、地域に根差した商店街は少しずつ姿を消しつつある。そんな中、今回は日本一長?い商店街として知られる天神橋筋商店街(大阪府大阪市)にやってきた。そぞろみポイント一個性豊かなディスプレイ何はさておき商店街の顔と言えばディスプレイ。それぞれの店舗が取り揃えた渾身の商品をいかに見せるか、その心はどこか美術館にも通じる。今回は、天神橋筋商店街をそぞろ見る中で気になった展示方法を筆者の独断でいくつかの類型に分けてみた。・ウィンドウ型オーソドックスな展示形式。とは言っても、ショーケースの形態は多種多様。食品サンプルが並ぶ食堂の陳列台もこの一種。・スプレッド型ショッピングモールでは見られない道路にはみ出したインスタレーション。洋品店、荒物屋、ふとん屋……天神橋ではよく見かける風景。・ハンガー型帽子屋や洋品店によく見られる形式。店先のファサードにフェンスやフックを取り付けて商品をぶら下げる。これなら形も柄も一目瞭然。ここに挙げたのはほんの一例。新しいタイプが見つかったら、こっそりと名前を付けて報告されたし。そぞろみポイント二見上げればアーケード近年では撤去されることも多いアーケードだが、ここにも商店街らしいかたちが潜んでいる。道行く人を雨から守るという実益を備えながらも、何かしら装飾したくなってしまうのが世の常。天神橋筋二丁目商店街、いわゆる「天2」のアーケードにはアーチに沿ってかくれ御迎人形がお出迎え。続く「天3」にはずらっと鳥居が立ち並ぶ。まさに「天神さん」の町である(駄洒落!?)。天満宮に近い方から真朱、桔梗、浅葱、萌黄と色が変化するのでついつい上を向いてしまう。「天4」のモチーフは「テントウムシ」。よく見れば点が四つ(これも駄洒落!?)。「天5」から曲がった天五中崎通のアーケードもなかなかのインパクトだ。紅白のツートーンは一年を通してお正月気分。一点透視で扇子のようにも見える。軒先の赤提灯もとい赤達磨、看板屋のかんばん、古色のついた電灯など、ノスタルジックな物語が始まりそうな予感。そぞろみポイント三シャッター画にも着目たとえお店が閉まっていても、諦めるのはまだ早い。そんな時にしか見られないのが「シャッター画」である。最近では、商店街の活性化や落書き防止のために描かれることも少なくないが、観察していて面白いのは看板代わりの物件。それもある程度年季の入ったものである。その多くが直接ペンキで塗られている中、とある靴屋の作例はなかなか凝ったつくりである。シャッターに穿たれた長方形や円形の小さな穴の向こうに黄、橙、赤がのぞく。店名はすぐに判別できるが、その下に描かれているのは何だろう。少し離れてみると、なるほど靴のアウトラインになっている。アナログなデジタル表示といった感じ。今日もなかなかいい素材が収穫できた。部長市川寛也いちかわひろや(テキスト担当)筑波大学芸術系助教。妖怪研究家。一九八七年生まれ。まちを歩きながら何かがいそうな場所を探し出し、その土地に固有の物語をつくる「妖怪採集」を各地で実践している。副部長dannyだにー(イラスト担当)イラストレーター。一九八七年生まれ。京都精華大学卒業後、イラストレーターとして、書籍、web、広告などの媒体で活動中。色鉛筆で自然や日常の風景を描く。forme | 309 | 20