ブックタイトル形 forme 309号
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形 forme 309号
●けがを防ぐ一言、タイミングの大切さ図画工作の時間には多くの刃物が登場します。それらを用途に合わせて安全に使うことが大切です。カッターの切り抜きの授業のことです。その児童は、刃の傾きが外側に開いてしまうくせがあり、その授業でも指導の中で刃の傾きは修正していました。その後、児童の刃が少し外側に傾いていました。このタイミングで声をかけるか迷いましたが、刃の傾きもそこまでひどくなく、児童が集中していたので、もう少し待ってからと判断を遅らせてしまったのです。児童はその直後に、けがをしました。下がき線よりも刃が内側に入り込んだことが原因でした。幸い大きな傷には至りませんでしたが、振り返ると、けがの兆候はすでに出ていました。上記は自身の失敗談ですが、けがの兆候を感じ取った段階で、けがを未然に防ぐことが大切だと感じた瞬間でした。カッターの授業では、安全面の指導内容として「刃の進む方向に手をおかないこと」「紙を回して切ること」「刃の角度に気を付けること」などが挙げられます。図画工作科は、多くの刃物を使う教科です。安全には十分に気を付けた指導を行っていきたいと思います。東京都江戸川区立二之江第三小学校宇田幸正●スケッチを見つめて中学二年生の自画像制作では、鏡を見てスケッチさせた後、さらに写真を使ってスケッチをさせました。顔の目鼻口などのバランスを正確にとらえさせたり、本人が表現したい一瞬の表情を描かせたりしたいと考えたからです。目の形など「よくわからない」と言うところは、写真を鉛筆でなぞらせて、表情がしっかり描けるように進めました。写真を鉛筆でなぞるようにして描き加えたスケッチは、どれも本人によく似ていたり、バランスもよくとれていたりしました。ほとんどの生徒は、「この方法だと描きやすい」という感想をもちました。私もこのスケッチの指導方法に満足していました。しかし、本制作に入るとA子が、「鏡で見て描いた方のスケッチがいいな」とつぶやきました。この生徒は、写真を使わずに鏡を見て描いただけの自分のスケッチを見つめていました。明らかに、他の生徒のスケッチと見比べてみるとバランスは正確さに欠け、表情もはっきりとしていません。ただ、多くの生徒たちも寄ってきて、A子のスケッチを見つめ始めました。すると「なんか、A子の心の中が見える気がする」「バランスの悪いところが、A子の味をだしてる」「見た目が悪くても、目を引くね」など、自分と向き合い、思いを込めて一本一本線を描いたスケッチに対する賞賛の声が教室中に巻き起こりました。見た通り正確に描かせる指導にこだわってきた自分を反省する、よいきっかけになりました。今後は、生徒たちの願いを大切にし、生徒一人ひとりの個性や思いが表現できる指導法を心がけていきたいです。愛知県豊田市立若園中学校外山奈美●素材の魅力は最高の教材美術Ⅰで木彫をやっていた時のこと。女子生徒二人が私のところに来て「先生!最初からもう一回作ってみたいので木を売ってください!」と言うのです。「どうして?」と聞くと、「もっと木目をきれいに出して、ツルツルになるまで仕上げたいんです!」んん……ナルホドと思い、予備に持っていた桂の角材を渡しました。二週間ほどして、再びその女子生徒二人が、私のところにやって来て、新作の木彫作品を見せに来ました。動物を抽象化した作品は、流れるような形をしていていました。表面も最終的に四〇〇番の紙やすりがボロボロになるまで研磨していて、クラフトワックスの効果もあり鏡面状に近い仕上がりでした。「よくここまで仕上げたねえ!」と言われた二人の表情は、ちょっと鼻の下を伸ばしながらの自信に溢れた照れ笑いが印象的でした。初めて触れた木の感触が、二人にとって理屈ではなく直接素材の魅力を肌で感じ、素材から色々なことを学んで楽しんだ結果が形になったと感じます。二人の女子生徒は、私からの評価などとは関係無しに、満足そうに木彫作品を撫で回していました。宮城県宮城野高等学校佐々木秀夫●ともに学ぶ図工・美術の先生と子どもが、ともにつくりだす学びの日々。forme | 309 | 26