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概要

形 forme 310号

演出がその場面にピッタリ合っていれば、画像数が多い映像より、かえって自然に感じるということもあり得ます。モチーフと動きの関係性実写と比べた場合の、アニメーションの魅力はどこにありますか。津堅一番の魅力は、現実にはあり得ない動きを表現できるところではないでしょうか。人や動物など実際に動くものをモチーフにして、実写のようにリアルに動かすという手法も、もちろん方法論の一つとしてはあります。ただそれは、実写映像をトレースすれば誰でもつくれてしまう。クリエーターの工夫が問われるのは、現実にはない動きをつくる場合です。実際に動くもの、例えば猫がモチーフだとすると、「猫ならではの動きをオーバーに表現して猫らしさを伝える」「実際の猫にはない動きをさせて意外性を出す」という二通りの方向性が考えられます。一方、ひとりでに動かないもの、例えば消しゴムをモチーフにする場合、必然的に後者の方向性しかありません。それでも消しゴムの「消す」という性質を生かした動きにするのか、踊ったり空を飛んだり消しゴムと無関係の動きにするのかによって、見る人の印象は変わります。現実にはないシーンをつくるのであれば、その動きにどんな意味があるのか、動かすことによって何を伝えたいのかがわかるように工夫しないと、ただ何かが動いているだけの映像になってしまい、印象に残りません。現実にない動きにはそれこそ無限のバリエーションがあるので演出の余地が非常に大きく、伝えたいテーマに適した演出ができれば、実写よりはるかにドラマチックなシーンをつくるということもできます。参考になる作品を教えてください。津堅実際に動くものをモチーフにした例としては、人形アニメーションの始祖、ロシアのL・スタレヴィッチによる昆虫パペットを使ったアニメーション『カメラマンの復讐』(一九一二)や、イギリスを代表する長編アニメーション、J・ハラスの『動物農場』(一九五四)などが挙げられます。どちらも動物的な動き、人間的な動きが場面に応じて使い分けられています。実際には動かないものが動く作品も二つご紹介しましょう。カナダで活躍したN・マクラレンの短編コメディ『オープニングスピーチ』(一九六一)のマイクの動き、同じマクラレンの『チェアリーテイル』の椅子の動き、さらに、アメリカのCG制作会社ピクサー・アニメーション・スタジオの第一作『ルクソーJr.』(一九八六)の電気スタンドの動きを見てください。ただのモノが意思を持っているかのように動くと、見る人の興味を引きます。言い換えると、クリエーターはアニ形を動かせ特集さらに甘える椅子喜びにとびあがる満足して楽しげな椅子仲直りのお辞儀A Chairy Tale[モノクロ/9分54秒]1957ノーマン・マクラレン[1914 ? 87]11 | 310 | forme