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概要

形 forme 310号

はじめに授業を考えるとき、子どもたちに習得させたい基礎的・基本的な知識・技能については、「地域、施設に関わらずどんな学校でも行えること」、「年代・経験に関わらずどんな先生でも行えること」を念頭に、道具や行為を考えるようにしています。その取り組みの一つ、「鉛筆」で「描く」授業を紹介します。学びのプロセス知識・技能の習得まず子どもたちに、一本の線で表現できる効果を考えさせます。すると、筆圧による強弱、動きによる速遅、角度による太細といった視点がたちまち挙がります。次に複数の線について同じように考えさせると、一本の線では気付かなかった、間隔、数、密度、方向、長さといった表現効果の視点に気が付きます。さらに、事前に紙に跡や傷をつけてから描いたり、描いた後で消したり、こすったり、削ったりすることで、その表現の効果は広がります。考えさせる際に、見本表のように描かせたり、出てきた技法と表現効果を分類表にまとめたりすることで、一層わかりやすくなります。次に、そうした様々な鉛筆の表現効果から、どんなことを感じるかを考えさせます。回答の多くが、具体的な物体ではなく、強弱、硬軟、寒暖、悲喜、緩急、触覚など、目に見えないものであることから、子どもたちが、もともと豊かな〝受け取る感性〟を持っていることを実感できるはずです。続けて子どもたちに、「鉛筆の表現から目に見えないものを感じられるなら、逆に、目に見えないものを鉛筆の表現効果で伝えられないだろうか?」と問いかけ、実際に、季節や感情などから設定した簡単なお題を提示し、描かせてみます。これは〝表現する感性〟の育成を意識した活動で、友人と当て合いや意見交換を行う場面をとれば、さらに深まりが期待でき、同時に授業も盛り上がります。作品制作における活用このように学習した鉛筆の知識・技能を作品制作に活用する際には、「目に見えないものを視覚化する」という観点が大切です。具体的な物や人を題材にしてもよいのですが、対象の見方(よく観る)や、形、色、質感といった学習要素は、絵を描くことが苦手な子どもにとっては高度な活動なので、発展的に位置付けたほうがよいと考えています。当初は、ストレートに「目に見えないもの」を課題にしました。漠然とした課題ですが、子どもたちは、春夏秋冬など季節に関わるもの、音、匂い、温度、触感など感覚に関わるもの、喜怒哀楽など感情に関わるものなどから、柔軟にテーマを決定していきます。最近では、国語科と連携し、国語の教科書に掲載された作品を題材に、登場人物の感情や、場面から感じる感覚といった「目に見えないもの」をテーマに、制作する試みも行っています。子どもたちは、自身の感性を生かし、既習の技法や表現効果を活用するための思考・判断・表現を繰り鉛筆で表現する目に見えない世界受け取る感性と表現する感性金沢大学附属中学校西澤明授業実践学びのフロンティア中学校1年生向きスケッチブックに鉛筆で様々な表現を試してみる。forme | 310 | 22