ブックタイトル形 forme 310号
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形 forme 310号
●土粘土雑感人は、古くから土に触れ、土を加工し、土を利用して生活してきました。つい何十年か前まで、子どもたちは日常で土に親しみ、その感覚を自然に体感してきたのです。しかし環境が多様に変化し、幼児の泥遊びから粘土製作まで、教育が担っているのが現状だと思われます。土や粘土の特性は、何よりもその可塑性です。手や指の力で、瞬時に形を変化でき、幾度となくその形を変容できます。また、手触りは冷たく、柔らかく、しっとりとして心地よい。しかもどっしりとした重量感もあります。しかしその反面、過度に触っていくと冷たさが薄れ、表面から乾燥しだし、ひび割れや折れ、外れを起こします。扱いやすくて扱いにくい素材であります。そのことから、子どもたちの土粘土製作においては、細かな製作より大きな量感の中から、力強い動勢をもたらすような題材設定が肝要でしょう。ねじれ、曲がり、ひねりなどを唯一三次元で表現できる素材として……。土粘土に体ごとぶつかり、たたき出し、にぎり出し、ひねり出し、つまみ出し、ちぎり、丸め……。その扱いやすくて扱いにくいやっかいな素材は、仮想現実や映像体験の波の中にいる子どもたちにとって、重要な素材であることは間違いありません。兵庫県神戸市立小学校図工科再任用教員●夏の美術室開放夏休み中、美術室を開放しています。目的は、夏休みの課題制作のためです。ポスターを描きたいが一人では難しいから、部活が休みだから、小さい兄弟がいて家では用具を出せないから、様々な理由からたくさんの生徒が利用します。予定表もつくり、夏休み前に配布します。基本は予定通りに開放しますが、「先生、これから美術室使いたいです」「明日、描きたいです」といわれると、予定日以外で開放することも多くあります。日当たりがよくとても暑い美術室での制作の様子は、活気にあふれて楽しそうです。集中して描く生徒、用具の使い方を教わる生徒、新しい表現を模索する生徒、一人ひとりがのびのびと作品と向き合っていることがよく分かります。自分の用具のほかにも、大きなハケや歯ブラシ、金網、ペンやクレヨンなど自由に使えるように準備してあります。上級生が使っているスパッタリングの用具を見て、「やってみたい!」とチャレンジしている生徒を見ると、とてもうれしくなります。なによりも、普段の授業と違って、じっくりと取り組む時間が持てることが一番いいと思います。生徒たちが余裕を持って試行錯誤できる空間を、今年も用意したいと思っています。茨城県潮来市立牛堀中学校末光美也子●足を運ぶ大切さ私は授業の最初に、決まって自らの体験を述べてきました。それは、生徒に対してだけでなく自分自身の反省を含めた教訓でもあります。初めてピカソの絵を観たときのことでした。「何だ、こんな絵小学生でも描けるよ!」そう思い、馬鹿にしていました。半分ずつ顔の向きが違い単純な線で描かれたものでした。次に観たときは、「この前観た絵と違うな、何が言いたいのかな」と思い、ゆっくり時間をかけて観ることができました。そして、三度目に観たときには「三点とも違う絵だけど、一体何を表現したかったのかな」と少しずつ興味が沸いてきました。その後ピカソについて色々と知りたくなり、画集を探し、家に帰り何度も繰り返し観ました。時が過ぎ、ピカソ特集の展覧会が開催され沢山の絵が間近に展示されているのを観たとき、胸に熱いものを感じました。観終わった後にも感動が冷め止まなかった思い出があります。そしてピカソが大好きになりました。その後、ピカソの生涯を知り油絵作品や沢山のデッサン、青・薔薇色の時代、キュビズムへの展開などを理解し益々好きになっていきました。この経験で私が伝えたいことは、自ら足を運んで芸術作品を観ることで、眼が肥えて自然と自分なりに少しずつ理解することができるようになるということです。難しい解説書や評論などを読むよりも自分の眼で直接本物の作品を観ることで、心の眼が自然に養われます。そんな習慣を身に付け、足を運んでたくさんの芸術作品を観て心を豊かにして欲しいと考えています。高校時代は多感で様々な事に興味が広がる多忙な時期ですが、心に余裕を持ち豊かな高校生活を送って欲しいと願っています。元早稲田大阪学園向陽台高等学校大野幹也●ともに学ぶ図工・美術の先生と子どもが、ともにつくりだす学びの日々。forme | 310 | 34