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概要

形 Forme 311号

近年各地で「〇〇トリエンナーレ」「〇〇ビエンナーレ」と呼ばれる国際芸術祭が数多く開催されています。一般的にトリエンナーレやビエンナーレでは人々の生活や歴史そして地域などをテーマとする現代アートの作品が多く展示されていて、来場者はただ単に鑑賞するだけでなく、併せて実施されるワークショップなどに参加し体験することも求められることがあります。現在さいたま市で開催している「さいたまトリエンナーレ2016」においても、内外から多くのアーティストが招聘され、作品展示に併せて様々な取り組みを展開しています。今回のトリエンナーレにホームベース・プロジェクトとして参加しているアーティストのアナット・リトウィン(アメリカ/イスラエル)とマシャ・ズスマン(ウクライナ/イスラエル)※1は、埼玉県立近代美術館で行っている教育普及事業「MOMASの扉」※2のゲスト講師として子どもたちを対象とするワークショップを実施することになりました。美術館の創作室に集まった子どもたちに対してアナットはまず「ホーム(心地よい場所)」と「ハウス(自分の暮らす場所)」の違いについて問いかけました。そして、その心地よい場所である「ホーム」へ至る道のりを画用紙に線で描くように指示し、その途中にある目印を五つ、記憶を巡らせながら描くように付け加えました。次に彼女は「ナビゲーションキット」をつくろうと提案しました。ナビゲーションキットとは、先ほど描いた道のりの線をもとに厚紙を割りピンでつなげてつくる、定規のような「メジャー・ステッィク」と、五つの目印について詳細を記すための冊子「ジャーナル」、最後に画用紙を丸めてつくる「テレスコープ」となります。子どもたちはアーティストや学生ボランティアとおしゃべりをしながら思い思いにキットの制作を進めていきました。ほとんどの子どもがキットをつくり終えた頃合いを見計らってアナットは、三つのキットを入れるためのビニールバッグを配りながら「このバッグは今つくっているキットを入れるためのバッグよ。」と説明し、バッグの中には小さな虫眼鏡が入っているので、それを取り出して創作室の前に集まるように声をかけました。子どもたちが集まったところでアナットは、本物のさいたま市の地図を取り出して「ハウス(自分の暮らす場所)」を探すように指示しました。子どもたちは虫眼鏡を使って懸命に自分の暮らしている場所アクティブ・ラーニングを生む国際芸術祭の魅力日本各地で開催されるアートイベントにおいては、鑑賞のみならず「体験する」ことがキーワードとなっています。作品に能動的にかかわることで、子どもたちそれぞれの見方・考え方が広がっていきます。forme | 311 | 10