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概要

形 Forme 311号

やギャラリーのホワイトキューブで展示され、世界中どこでも均質に見えることが重要視されたのです。しかし、近代化を推し進めた結果が今の状況です。地球環境は完全に手遅れになり、資本主義は現実性を失ってどうしていいかわからない。こうした近代のさまざまな問題とともに、美術のあり方にも疑問が生じてきています。改めて美術とは何かが問われているのです。アルタミラやラスコー洞窟壁画以来、世界中で美術の営みは連綿と続いていますが、「美術とは、自然と人間の関係を表す技術」だという本質に立ち返るべきなのです。歴史的には、採集経済から始まり、農業が起こり、そして近代化の後にグローバル社会が訪れるという見方ができます。しかし、現実は一本道ではなく、越後妻有や瀬戸内地域には、そうした文明の諸層がまだら模様に存在しているのです。そういう中に優れたアーティストが入って、何を見つけ、自然や社会との関係をどのように表現するのか。それが面白いから多くのファンがはるばるやってくる。こうした表現は決してホワイトキューブでは生まれません。「瀬戸内国際芸術祭」の男木島では、会田誠や松蔭浩之、パルコキノシタらによる昭和40年会という作家グループが滞在制作をしながら、常識はずれともいえるめちゃくちゃな展示をしていました。そこに男木島の出身者である家族が遊びに来たそうです。一週間ほど通っているうちに、子どもたちはよほど楽しかったのでしょうね、お父さんにお願いして男木島に移住してしまったのです。子どもが島に住むことになったので高松市は廃校になっていた学校を再開しました。これは従来の美術の枠組みでは決して起こりえない画期的な出来事でした。学校を再び地域の中心に越後妻有の農業は非常に厳しい環境の中で行われてきました。度重なる水害や豪雪に加え、平らな土地がないという制約もある。一体どうやって道を切り拓き、棚田をつくっていったのか。そうしたところに焦点を当てて作品をつくるアーティストもいます。あるいは、採集経済や縄文時代的な文明をリ棚田2000イリヤ&エミリア・カバコフ[1933~/1945~]photo: ANZAI鉢&田島征三絵本と木の実の美術館2009~田島征三[1940~]photo: Shigeru Akimotoforme | 311 | 16