ブックタイトル形 Forme 311号
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形 Forme 311号
之先ず見る儿目儿第十四回かたちが、かんがえる寒かんあ鴉とは冬のカラスのこと。厳しい季節にあってなお超然としたその姿の、なんと気高いことでしょう。作者の〝画鬼?こと河かわなべきょうさい鍋暁斎が、この作品に法外な値段をつけた逸話は有名です。「カラス一匹には高すぎる」とからかう周囲に、暁斎は「カラスに対してではない、長年の修行に対する値段なのだ!」とうそぶいたといいます。たしかにこの絵の凄味は、ダイナミックな枝ぶり、精妙に折り重ねられた墨の複数の濃淡と筆さばき、そして塗り残された地の色の効果(目や羽の中にもご注目)、それらの技術の粋が、最終的に枯木と寒鴉の図にぴたっと着地している華麗なアクロバットにちがいありません。暁斎の言葉を受けて、冒頭の感想をちょっと訂正しましょう――カラスが気高いのではない、それを描いた筆が気高いのだ、と。もし画家がそんなことを言い放ったら、傲慢に聞こえるでしょうか?けれど、結果としての図ではなく、その図を成立させている構造こそが価値をもつ、という暁斎の言葉の主意は、不遜どころかとても本質的です。本質的ならば別の作品にも応用できる。このカラスが話題を呼んでいたまさにそのころ、はるか遠くフランスで生まれた、あの作品に当てはめてみましょう。ロダンの「考える人」。とても有名ですが、「考えている人を象った彫刻」と見るだけでは今ひとつおもしろさが伝枯木寒鴉図[絹本墨画/148.2×48.2cm]1881河鍋暁斎[1831~1889]forme | 311 | 18