ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

形 Forme 311号

わりにくい作品です。そこで暁斎の言い方の出番。すなわち、考えている人の形をしているのではない、形が考えている0000000のだ!この作品は今や「考えるポーズ」の定型のようになっていますが、思えばそんなポーズに決まった形はないわけです。考える、という頭の中の動きを、今まさに考えている、という動きとして、どのように形で示せばよいのか。見えない感覚や感情の形象化は芸術のミッションのひとつですが、それに対するロダンの回答こそ、形に考えさせる、というものであった、とぼくは思うのです。この彫像の見応えは、特に背中の筋肉の複雑な隆起です。まるでグシャッと丸めた紙のように、ふくらみを保ちつつ固く凝縮しています。そう、頭の中の意識が一点に向かってじわじわと集中して固まっていく、そのような圧力を伴った、目には見えないけれどもたしかに感じられる一連の動きが、形に宿っているようではありませんか。図よりも構造が、語っている。形が考えている、そう見えるでしょう?うろ覚えでこの「考える人」を真似して、人はよく足を組みます。本当は膝を合わせているのですが、組みたくなる気持ちはわかります。その方が、体が小さくなるから、ですよね。「考える人」のかたち全体が訴えてくるギュッと縮まった印象を、つまりロダンが形象化した考える感覚の動きを、足を組むことでなぞったのです。組んだ足の形の中に、ロダンを呼び出した、というわけでしょう。成相肇なりあい・はじめ東京ステーションギャラリー学芸員。一九七九年生まれ。府中市美術館学芸員を経て、二〇一二年から現職。主な企画展に「石子順造的世界」、「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン」など。考える人[ブロンズ/183×130×110cm]1881-82(原型制作)1903(拡大)静岡県立美術館蔵オーギュスト・ロダン[1840~1917]19 | 311 | forme