ブックタイトル形 forme 312号
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形 forme 312号
はじめに 今回は、自然の色の美しさを発見し、同じ色をつくる授業を紹介します。 授業をはじめる上で大切にしたかったのは、自然の色づくりから子どもたちが、①自然に愛情をもって接し、②生活の中にある美しさを発見し、③自分の住む町を大切しようという思いが芽生える、そんな時間を生み出すことでした。 使用する道具は絵の具セットと小さめのスケッチブックです。鉛筆は使用しません。できあがった色を絵筆につけ、直接スケッチします。このほうが、自然とじかにつながっている感覚が強いと思います。授業実践 今回の授業は、新緑の五月に行いました。晴れた日と雨の日の両方で授業ができれば、もっといいと思います。理由は、晴れの日はもちろんですが、雨の日には、雨滴が草花を濡らし、自然の色々をますます美しくしてくれるからです。もちろん、季節を変えて授業することも可能です。四季折々の美しさを、子どもたちはきっと見つけるはずです。 授業は、校庭に出て美しいと感じ、さらに表現したいと思った色の草花を、見つけることからはじまります。ここから、ひとりひとりの「美しい」という感じ方の違いが、視覚的に表れます。そしてお互いが見つけた美しさについて対話も生まれます。 教室に戻った子どもたちの制作は、まず草花の観察からはじまります。子どもたちは色を介して、自然と対話するのです。対話(コミュニケーション)は言葉だけでなく、色でもできることを学びます。 しかし自然の色を再現することは、簡単なことではありません。何度も混色をしながら、本当の色を探し続けます。制作中のパレットや試し塗りカードを見ると、子どもの試行錯誤が分かります。 そしてようやく見つかった色を、絵筆にしみこませ草花をスケッチします。形と色がひとつになって画面に広がるこの段階に入ると、すべてが筆先に集中され、教室が一気に静かになります。 またこれまで学んだことを生かし、にじみ、ぼかし、ドライブラシ、点描、重色など、表現したいものに応じて、技法を選びます。絵の具と水の配分量についても注意深くなります。 何人かが、摘んだ草花を筆洗容器の中に浮かしていたので、理由を尋ねると、「草花が萎れないように」とのこと。自分が見つけた自然の美しさを、少しでも長く留めておきたいという気持ちでしょう。終わりに 自然の色は美しさだけでなく、人の力では動かすごとのできない強さをもっています。そのことを子どもは、制作がはじまってすぐ感じ取っていると思います。だから自然の色に近づくには、謙虚な気持ちで目の前の美しさに、自ら入っていくことになります。自然の色と対峙するような関係でなく、自然の色の中に自分がいる関係です。色ミッケ 固有色を見つけて自然の美しさを味わおう兵庫県佐用町立上月中学校 伊勢 幸弘授業実践学びのフロンティア中学校2 年生向きforme | 312 | 16